スポーツ振興政策とヒラリーコミッション(1/3)

第00024号
2003年2月24日 更新

ニュージーランドのスポーツ法
― スポーツ振興政策とヒラリーコミッション(1/3)―

金沢学院大学教授

根保 宣行

1.ニュージーランドの事故補償制度

ニュージーランドは、1972年に事故補償法(Accident Compensation Act 1972)を制定し、不慮の事故に対する新しい補償制度を導入した。この制度における補償は、損害の発生に関する加害者の過失、あるいは被害者の無過失を要件とせず、また、損害の発生形態の如何を問わず、全ての事故に適用される。この制度を支えるニュージーランドの事故補償法は、事故の被害者に対して、事故により生じた損害に関する不法行為訴訟の提起を禁止し、独立の行政機関である事故補償公団(Accident Compensation Corporation. 以下、ACCとする)への申し立てと審査により、国が取り扱う基金から補償を行うと定めている。

この事故補償制度が導入された当初、ACCは補償に関して三つの救済制度を持っていた。その制度とは、就業者救済制度(Earners' Scheme)、自動車事故救済制度(Motor Vehicle Accident Scheme)、そして補助的救済制度(Supplementary Scheme)で、各々に個別の基金が設けられていた。

これらの補償制度の財源は、雇用主及び自営業者からの徴収金や、運転免許証所有者からの徴収金、または一般税収から賄われる。補償内容に関しては、各制度に区別はなく、
@ 労働不能に対する所得補償
A 医療等給付
B 非経済的な損失に対する補償
C 所得に関連しない金銭的喪失補償
D 死亡補償
の五分野に分類される。

このような制度の中でニュージーランド政府は、各基金の保険料を上げないまま保護のための政策範囲を広げたために支払い額が増大し、1985年になって深刻な財政危機に直面した。これを契機に、政府は法令の大幅な見直しを行い、その結果として1992年法が生まれた。このような見直しにあたって、経費削減を目的とする事故防止策の重要性に関する認識が国民の中に高まり、以後政府は、スポーツに対する不慮の事故が多いことから、スポーツ事故防止政策の強化にも積極的に取り組むようになった。

参考文献
(1)根保宣行(1998)「ニュージーランドのスポーツ振興と事故防止におけるヒラリーコミッションの役割」、『金沢学院大学文学部紀要第3集』、金沢学院大学、pp.1-9。
(2)根保宣行(1997)「ニュージーランドにおけるスポーツ振興政策とスポーツ事故防止政策」、『日本スポーツ法学会年報4号』、早稲田大学出版、pp. 129-142。
(3)根保宣行(1995)「ニュージーランド事故補償法とスポーツ事故」、『日本スポーツ法学会年報第2号』、早稲田大学出版、pp. 102-108。
なお、再審に対する決定の詳細は、審査官Dave Walker氏から資料提供を受けた。


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