スポーツ責任訴訟の傾向と分類3

第00020号
2002年12月6日 更新

フランスにおけるスポーツ事故の訴訟と判例の概況
= スポーツ責任訴訟の傾向と分類3=

神戸大学 発達科学部 助教授

齋藤 健司

 

スポーツ責任訴訟と管轄裁判所

前述のスポーツ判例評釈資料集に掲載されているスポーツ責任訴訟判決を判決年と判決を下した管轄裁判所ごとに分類してみると表1の通りである。スポーツ責任訴訟では、民事責任、刑事責任および行政責任のそれぞれの責任が問われるケースが存在しているのである。中でも民事責任に関する訴訟の割合は、スポーツ責任訴訟全体の81%と大多数を占めている。
また、最高裁判機関であるコンセイユ・デタおよび破毀院による判決数は、行政、民事および刑事事件すべてを合計すると110件あり、最高裁判機関によるスポーツ責任訴訟に関する判例の数は、日本に比べて著しく多いと言える。
スポーツ責任訴訟で民事責任が問われるケースは、債務不履行責任の場合と不法行為責任の場合に大別される。

債務不履行責任としては、
第1に、スポーツマンとスポーツ組織の責任者との間での契約債務の性質および内容に関する訴訟があげられる。例えば前号で解説したスポーツ保険契約に関する情報提供義務責任をめぐる訴訟がこれに含まれる。
第2に、観客または観衆に対するスポーツ活動の組織者の責任が問われる場合がある。
第3に、審判や大会役員など、スポーツ組織とその協力者の責任が問われる場合がある。第4に、スポーツ活動の組織者とボランティア協力者との間またはスポーツマンの間で活動に関する補佐または補助の合意が存在したかどうか、またそれに基づく責任が存在するかどうかが争われる場合がある。

不法行為責任としては、
第1に加害者本人(スポーツマン、指導者、組織責任者など)の責任、
第2に使用者責任、
第3に動物責任が問われる場合(特に乗馬に係わる事件)がある。
不法行為責任が問われるケースは、スキーヤーの衝突事故のようにスポーツマン同志の間での事故責任だけに限らず、観客、協力者、隣人など、第三者に対するスポーツマン、指導者、組織管理者の責任が問われる場合がある。

スポーツの刑事責任に関する訴訟は全体の18%を占めており、刑事事件に発展するスポーツ責任訴訟の件数は、日本に比べて多いと言える。スポーツ責任訴訟における刑事責任の追及がフランスでは当然に行われているのである。

刑事責任が問われるケースとしては、
第1に、生活に対する故意によらない侵害(仏新刑法典第221-6条)にあたるケースとして、自動車、自転車、ヨットなどの乗り物を運転するスポーツマンに対する責任と、レース場、競馬場、スキー場、ウインドサーフィン大会、レガッタなどの大会組織者の責任が問われている。
第2に、故意による人身侵害(仏新刑法典第222-11条)にあたるケースとして、サッカー選手やサッカーの審判の刑事責任が問われている事故がある。
第3に、人身に対する故意によらない侵害(仏新刑法典第222-19条)にあたるケースとして、サッカー選手、ラグビー選手、登山用具製造者、テレマークスキー経営者、市長の刑事責任が問われている。

行政責任が問われるケースとしては、
第1に、スキー場や水浴場などの自治体所有のスポーツ施設の管理または欠陥に関する市町村の責任が問われている。外部団体に自治体所有のスポーツ施設の運営を委託している場合でも、当該スポーツ施設の管理上の問題で事故が生じた場合には、自治体の監督責任が問われるケースがある。
第2に、役務の組織運営上の過失、または一般開放施設の維持管理をめぐる国の責任が問われている。
第3に、行政車両(例えば市町村のゲレンデ救助監視員が運転する車両)により生じた損害の責任が問われている。


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