スポーツ保険の情報提供義務に関する訴訟
神戸大学 発達科学部 助教授
齋藤 健司
スポーツ基本法によってスポーツ団体がスポーツ傷害保険について会員に情報提供する義務が定められると、スポーツ事故が起こった際に、実際にスポーツ団体がスポーツ保険の情報提供義務を果たしていたかどうかが争点となる訴訟が多発した。すべての会員がスポーツ保険に関する情報を得ることができるように指示徹底することは、大規模で全国的なスポーツ連盟にとっては非常に困難なことであったからである。例えば、保険に関するポスターを掲示することによって情報を知らせるだけでは、すべての会員が本当に情報を確認できたと証明することはできず、情報提供義務の違反を理由にしてスポーツ事故の補償をスポーツ団体側に請求する訴訟が生じるようになったのである。また、会員すべてにスポーツ保険に関する情報書類を郵送して知らせようとすると、そのための郵送料がスポーツ保険料に匹敵し、情報提供義務のために過剰に余分な経費がかかる矛盾が生じたのである。
このような情報提供の方式に関する問題を解決するために、2000年にはスポーツ基本法第38条が改正され、ライセンス保険への加入に関する事項は、会員登録のための用紙の中に記載される方式を採用することによって会員への情報提供が行われるように改善されたのである。
フランスのスポーツ団体は、その会員の利益を保護する責任があり、スポーツ事故に備えてスポーツ保険を用意する法的義務があるのである。そして、行政による強制スポーツ保険の導入は、ライセンス保険というスポーツ団体保険の発達をもたらしたのである。さらに、判例によって、ライセンス保険の内容を会員が十分に知ることができるように、スポーツ傷害保険の内容をスポーツ団体が会員に情報提供する義務が定められているのである。日本においても、今後スポーツ団体によるスポーツ団体保険の加入方式や情報提供のあり方が問われることになるであろう。
参考文献
(1) 齋藤健司、フランススポーツ基本法におけるスポーツ保険制度の形成、スポーツ産業学研究Vol.8, No.2, 1998, pp. 29-38.
(2) J.-C. Breillat, F. Lagarde, J.-P. Karaquillo, Code du sport, Dalloz, 2001.
(3) Cour d'appel de Versaille (1er CH.), 29 juin 1984, Jean-Pierre Lotz c. Federation
francaise des sports de glace (F.F.S.G.), Gazette du palais, 4 avril 1985, p.224.
(4) 齋藤健司、フランスにおけるスポーツ保険に関するスポーツ団体の法的義務について、日本スポーツ産業学会スポーツ法学専門分科会年報第2号、1997,
pp. 24-35.
<次回に続く>
次回は「スポーツ責任訴訟の傾向と分類」について
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