箱ブランコ事故

第00010号
2002年9月10日 更新

“危険だから撤退”は、あまりにも短絡的である
箱ブランコ事故にみる自治体の動き

コラムニスト 平光 正則


2人以上が同時に乗れる対面式の“箱ブランコ”から子どもが転落したり、転倒するなどして、大けがをする事故が、後を絶たず、今年に入って撤去や使用中止をする自治体が相次いでいる。
その理由として「想定外の遊び方によるもので、管理責任が持てない」と判断したためという。
一方、設計に問題があったと見られるケースもあり、国土交通省が来春までにガイドラインを策定する。

主な事故例をみてみると、

▽平成12年11月、神奈川県相模原市の子どもの広場で、小学4年生の女児が箱ブランコの背もたれ部分に立ち乗りしていて転落、揺り戻されたブランコで腹部を強く打って死亡した。
同市では「これで大丈夫だという対策が取れない」として平成13年1月に、各自治会が管理する8ヵ所の広場や同市の公園など全22基について、自治会側の了解を取った上で撤去した。

▽4月4日、福井市の公園で、小学2年生の男児が、友だちの乗った箱ブランコを後ろから押している最中に転倒。ブランコの底面と地面のすき間約15センチに挟まれて、頭の骨を折った。神経系
を損傷し、右目が見えなくなったという。
この事故を受けて、同市は5月に、市内全144基を撤去した。

▽1998年(平成10年)、北海道室蘭市で女児が金具に指を挟んでケガをして以来、事故は起きていないが、「全国で頻発しており、管理責任を問われる事故が起きる前に」と、判断して、5月中旬
に同市内全42基の箱ブランコの上部をロープでくくり、使用できないようにした。

▽平成12年(2000年)、府中市では、全国的に死亡事故が起きているため、遊具の安全点検を行った。その結果、同市内にある58基のうち半数近い25基は、ブランコの床と地面とのすき間が、子
どもの頭より大きい30センチ以上開いているか、ゆりかごの部分を大きく揺らしても、ゆっくり戻る構造になっているとして、その存続を決めた。ただ、老朽化した3基は、既に撤去を決め、危険な乗り方をすると、大けがをするおそれのある30基も撤去する方針という。
その考え方は、母子のスキンシップの場として設置された目的を考え直してもらうのが狙い。このため撤去や使用禁止にはせず、子どもたちに安全に遊んでもらうよう指導していく方針を打ち出
したもの。
議会でもこの問題が取り上げられたが、同市公園緑地課は“使用中止にするのではなく、想定外の遊び方をしない啓発が必要である。想定外の遊び方が事故を招くと考えると、短絡的に設置しな
い方がいいということになるが、今まで設置してきた意味合いはどうなるか”という方針を示した。
また、学校を通じて安全管理を徹底することにした。

▽東京都町田市では、箱ブランコから子どもが転落する事故が全国的に起きているので、2001年6月6日、同市内にある90基の箱ブランコをロープで固定、「しばらくの間、使用を中止します」と
いうはり紙をして、使用できないようにした。これは「安全管理に責任が持てない」 と判断したからだという。

同市公園緑地課の説明によると、箱ブランコは1980年ごろから設置を始め、市内387ヵ所の公園のうち90ヵ所にある。重さが100キロ以上もあるため、転落して地面との間に挟まれると、大けがをすることがある。このため転落しやすい「立ち乗りは危険」と書かれた看板を設けている。子どもの安全を最優先に考えたからで、撤去には、かなりの費用がかかるため、すぐには出来ないが、今後検討したいという。

国土交通省では、都市公園の遊戯施設の安全に関する調査検討委員会を設けて春に、箱ブランコを含めた指針を出す予定だったが、数値などの安全基準については、市町村が現場の状況に即して判断すべきだ、と消極的な態度でいる。
一方の市民団体・プレイグラウンド・セイフティ・ネットワーク代表の大坪龍太さんは、基準を作るのは国の責務であると主張しているという。
母子のスキンシップの場として設けられた2人以上が対面して乗ることができる児童(母子)向け遊具・箱ブランコは、このように“想定外の事故“多発という展開にさらされているが、各自治体では、
撤去や使用禁止を打ち出す一方、母子(子ども同士)スキンシップの場としての目的を考え、子ども達に安全に遊んでもらうよう指導したり、総点検を実施して改良を加えるなど安全性をより高めている自治体もある。
スポーツ行事等で事故が起きると、これ以上危険を伴う行事は続行できない、管理責任が持てない、と大会を中止する主催者が少なくない。この箱ブランコでも言えるように、想定外の事故に対処して、総点検した上で改良し、安全を呼びかけ、その目的を達成しなければスポーツの発展はない。ガードを固く(保身)すつあまり短絡的な処理に走りがちであるが、“より安全”を目指して、事故を総点検した上で、管理・運営の改善に手を加える等、勇気ある続行を望みたい。

*参考資料/朝日、読売、東京等の各紙より引用。


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