部活動・クラブ活動中の事故

第00007号
2002年8月19日 更新

事故事例の視点
■部活動・クラブ活動中の事故■

東京女子体育大学助教授

入澤 充

★卓球台倒れ小学5年生重体
1998年10月2日午後1時45分ごろ、名古屋市中村区日ノ宮の市立千成小学校で、クラブ活動のため、折り畳み式の卓球台(重さ約90キロ)を倉庫から体育館に運び、広げようとしたところ、台が小学校5年生の女子(10歳)の頭を直撃。女児は病院に運ばれたが、意識不明の重体。
中村署の調べによると、倒れた卓球台は折り畳んだ状態で高さ約1.6メートル。女児は卓球クラブの仲間3人と一緒に、卓球台を運ぶ際に事故にあった。学校側によると、倒れた面の左側のキャスターが外れており、学校はキャスターが外れていたため、台が倒れたのかどうか調べている。
同校では毎週月曜日の5時間目に授業の一環として4年生から6年生までがクラブ活動を行っていた。事故が起きたとき、クラブの担当教諭や男児ら約15人が体育館にいたという。
(東京1998.11.3)


★部活練習中に中学生死亡
1998年11月7日午後5時ごろ、茨城県関城町立関城中学校テニス部員の1年生男子生徒が校舎の周囲を走っていたところ突然倒れ、救急車で病院に運ばれたが、約1時間半後に死亡した。下館署は急性心不全の疑いがあるとみて、詳しく調べている。
同校のテニス部は同日午後1時ごろから部内 の対抗試合を行ったあと整理運動をし、その後部員全員で校舎の周囲をジョギングしていた。死亡した男子生徒は3試合に参加していた。
同中によると、死亡した男子生徒はこれまでに心臓疾患などの目立った病気はなかったという。
(毎日1998.11.8)


★柔道練習中に高1倒れ1ヵ月後に死亡
小1のときに脳を手術大分県立高校柔道部男子生徒が部活動の練習中に頭がい内出血を起こし、約1ヵ月後に死亡していたことがわかった。
死亡した男子生徒は1998年9月15日午前9時ごろから同校の武道場で練習を開始、ウォーミングアップの後、5分間くらい他の部員と技のかけ方の練習をした。変わった様子はなかったが、午前11時ごろ、終了の礼をした直後に倒れた。
すぐに救急車で病院に運ばれたが、脳静脈からの出血と診断され意識が戻らず、10月11日に死亡した。
(熊本日日1998.11.17)


★中2柔道部員死亡事故で元教諭ら2人を書類送検
1998年8月、奈良市立中学校の2年の男子柔道部員が同市内の私立中学校での合同練習中に倒れ翌日死亡した事故で、奈良県警と天理署は無理やり練習をさせたとして、業務上過失致死
などの容疑で当時の市立中学校柔道部顧問教諭(依頼退職)と私立中学校柔道部顧問教諭を書類送検した。
調べによると、元市立中学校教諭は8月18日、私立中学の武道場で行われた柔道部の合同練習中に突然倒れた部員を足でけり、無理やり練習を続けさせ、私立中学校教諭は練習の相手にな
るなどして、それぞれ監督責任を怠り、部員を熱中症による多臓器不全で死亡させた疑い。二人とも容疑を認めているという。
(信濃毎日1998.12.10)


★バットで額殴られた野球部員、監督を告訴
野球部の部活動中に監督にバットで殴られけがをしたとして、愛媛県の高校2年の男子生徒と父親が高校野球部監督を傷害容疑で松山西署に告訴した。同署は内容を検討したうえで受理するかどうか決める。
告訴状によると、同監督は1998年8月7日午後3時ごろ、同校グラウンドで練習中、生徒がノックを受ける際、捕球の合図をしなかったことに腹を立て、生徒を呼びつけ、バットの先端で額を殴り、約20日間のけがをさせた。生徒は同18日から10日間、東京の実家近くの病院に通院、治療を受けたが、約1センチの傷跡が残った。後遺症の頭痛で現在も松山市内の病院に通院している。
生徒は東京都出身。この事件で3学期から東京周辺の高校への転校を余儀なくされたという。
(愛媛1998.12.19)


◆ 問題点
平成9年度版『学校の管理下の死亡・障害』(日本体育・学校健康センター、平成10年発行)によると学校管理下での災害発生件数は100万件を越え、そのうち死亡事故は170件、疾病による死亡107件、そのうち体育活動中の突然死51件、体育活動外51件、その他熱射病・日射病等で死亡が5件となっている。
体育活動中の突然死が一番多いのは中学生24件、次いで高校生20件、小学生7件と続いている。なかでも走っているときは学校種別によら ず多く、22件を数えている。
判例では、野球部の練習中に急性心不全で死亡した部員の父母が、学校設置者及び監督、コーチに対して損害賠償責任を請求した事件がある。
裁判所は、事故は学校の安全配慮義務違反によるものだとして、高校設置者に対して民法715条の使用者責任、監督、コーチらには民法709条の不法行為責任により損害賠償の支払いを命じた(水戸地裁土浦支部平成6年12月判決)。
事故のあった高校は甲子園大会に数回出場しており、判決から本件事故以前にも部員の脱水症、熱射病等々で救急車で病院に搬送され治療を受けていた事実が証明され、練習も厳しかったことがうかがえる。脱水症や熱中症も速やかな判断をしなければ死に至ることは先の『学校の管理下の死亡・障害』からも明らかである。
学校運動部の活動は学校教育活動の一環でもあるが、試合に臨む以上勝敗にこだわらなくてはスポーツの意義が半減する。しかし、指導者が勝利を意識するあまり選手の健康や体力、技術を無視した練習指導をしていることが数多く見受けられ、本欄で紹介した高校野球部の監督を告訴した事例や中学校柔道部の練習中事故事例は、いずれも指導者の行き過ぎた事例である。
これらを払拭しなければ、学校教育活動の一環としての部活動の意味はなくなるだろう。


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