ヨット遭難の命綱訴訟

第00004号
2002年8月1日 更新


ヨット遭難の命綱訴訟
〜製造会社が800 万で和解〜

伊 藤  堯

東京女子体育大学名誉教授
日本スポーツ法学会理事



事件の概要
 1994 年3 月、ロサンゼルスに向け航行中のヨット「酒呑童子(しゅてんどうじ)」で遭難、92 日間の漂流後に救助された農業諸井清二さん(60 )=大阪府茨木市=が、遭難は命綱のハーネス(転落防止用ベルト)の欠陥が原因として製造会社(横浜市)と販売会社(西宮市)に計約1860 万円の損害賠償を求めた訴訟は、大阪地裁で28 日までに、製造会社側が和解金800 万円を支払うことで和解が成立した。
 訴えによると、諸井さんは94 年2 月11 日、関西空港開港を記念したヨットレース参加のため西宮ヨットハーバーを出港。3 月8 日、太平洋上で大しけに遭い、ハーネスで体をつないで帆を巻き取る作業中、大波にさらわれて海中に投げ出された。その後船内にはい上がったが、ヨットはマストが折れるなどして操縦不能となり、6 月7 日に貨物船が救助するまで漂流し続けた。諸井さんは、ヨットの損害と、死の恐怖を経験した精神的損害に対する賠償を求め、昨年1 月に提訴。事故は製造物責任(PL )法施行前だったが「構造に欠陥があるのは明らかで、PL 法の精神に沿って賠償すべきだ」と主張していた。(神戸H10 ・4 ・28 )


問題点
 PL 法の制定はスポ−ツ関係産業にも多くの問題点を投げかけている。制定以前は、製造物の欠陥による賠償責任の追及について、欠陥と事故発生の因果関係の証明が困難であったが、PL 法制定以後は欠陥があったことの証明で賠償請求することが出来るようになった。本件は、PL 法制定以前の事故に対して、PL 法の精神に沿って判決がなされたところに重要な意義がある。現在、スポ−ツ用品製造メ−カ−、販売店、スポ−ツ用品のレンタル関係(スキ−等)企業は、このPL 法対策を重要課題として取り組んでいる。その対策として、免責同意書を購入者、利用者に提出させる方法もとられている。今後このような法的責任の問題も、スポ−ツ関係者の重要な研究課題である。


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