山の遭難事故

第00003号
2002年7月29日 更新


山の遭難事故
〜めだつ中高年者、滑落、道迷い〜

伊 藤  堯

東京女子体育大学名誉教授
日本スポーツ法学会理事


昨年1 年間死者・行方不明は197 人
登山や山菜採りで山に出掛けた人たちの山岳遭難は昨年1 年間で815 件、961 人で、死者・行方不明者は197 人に上ったことが16 日、警察庁のまとめで分った。遭難者の約75 %を40 歳以上の中高年者が占め、とくに山菜採りでは55 歳以上の人の遭難が目立っている。原因別では、滑落に続いて、道迷いが多く、5 月の山菜採りシーズンを控え、同庁は注意を呼び掛けている。警察庁によると、山岳遭難は山菜採りの時期の5 月が108 件、夏山シーズンの8 月に156 件、キノコ採りシーズンの10 月が105 件と、集中して発生。40 歳以上の遭難者は725 人に。山菜採りでの遭難者は208 人で、年齢別では55 −74 歳が最多で約68 %。40 歳以上の人が98 %を占める。遭難全体を原因別に見ると、滑落の215 件に次いで道迷いが198 件、転落が123 件。心臓病などの病気によるものも74 件あった。(赤旗H10 ・4 ・17 )


死者・行方不明が197 人
昨年中の山岳遭難

 昨年一年間に発生した山岳遭難での死者・行方不明者は前年と同じ197 人だったことが、警察庁のまとめで分かった。全体の遭難件数は815 件、遭難者は961 人で、前年より81 件、172 人減少した。遭難は山菜採りシーズンの5 月と夏山シーズンの8 月、キノコ採りシーズンの10 月に集中、この3 ヶ月で45 %を占めており、警察庁はゴールデンウィーク中の登山者に注意を呼び掛けている。
 警察庁によると、遭難者の内訳は死者182 人、行方不明者15 人、負傷者419 人、無事に救出された人345 人。救助活動に出動した警察官は延べ約8300 人で、ヘリコプターは民間や自衛隊などのヘリを含め延べ348 回出動した。遭難発生を都道府県別にみると、長野99 件、富山69 件、新潟66 件、山梨50 件などの順。この四県で全体の35 %を占めた。山岳遭難ゼロは千葉、広島、福岡などの九県だった。(神戸H10 ・4 ・27 )


北アで遭難相次ぐ3 人死亡
千葉の55 歳女性奥穂高岳で滑落
 4 日午前7 時20 分ごろ、長野県安曇村の北アルプス「奥穂高岳」(3190 メートル)南西のコブ尾根付近で、千葉市美浜区真砂2 、主婦、平島靖子さん(55 )が約200 メートル下の沢に滑落した。同県警山岳救助隊が現場に駆けつけたが、平島さんは全身を強打し、すでに死亡していた。
 豊科署の調べでは、残雪に足を滑らせたらしい。平島さんらは6 人パーティーで2 日、同村の上高地から北アルプスに入山、4 日は奥穂高岳を目指して登山中だった。平島さんは6 〜7 年の登山経験があり、冬山用装備をし、アイゼンも付けていた。(毎日H10 ・5 ・5 )


大阪の60 歳女性鹿島槍ヶ岳滑落
 また、4 日午後2 時15 分ごろ、長野県大町市の北アルプス「鹿島槍ヶ岳」(2889 メートル)南東側の赤岩尾根高千穂平付近で、大阪府箕面市、パート、鬼塚昌枝さん(60 )が登山道から足を滑らせ、約150 メートル下に滑落した。一緒に登山をしていた仲間から携帯電話で連絡を受けた同県警山岳救助隊が民間ヘリコプターで収容、同市内の病院に運んだが全身を強打し、死亡した。大町署によると、現場は急斜面の登山道で、鬼塚さんは下山途中だった。
 鬼塚さんは6 人パーティーで、3 日に同市平の扇沢から入山。4 日朝鹿島槍ヶ岳に登り、山を下りる予定だった。(毎日H10 ・5 ・5 )


北アでまた転落死
 6 日午前8 時20 分ごろ、長野県の北アルプス奥穂高岳(標高3190 メートル)から下山中の東京都世田谷区弦巻3 丁目、無職高橋宝さん(75 )が足を滑らせ、約400 メートル転落した。目撃者からの通報で同県警山岳救助隊がヘリコプターで救助に向かったが、高橋さんはすでに死亡していた。(朝日H10 ・5 ・6 )


大半が高血圧症や心疾患
昨年県内の中高年登山者突然死
信大医学部小林講師ら国際医学会議で発表

 信大医学部第一内科の小林俊夫講師らは、昨年県内の山岳で急増した中高年登山者の突然死7 例を追跡調査し、22 日、松本市で開かれている「第3 回登山と高所環境に関する国際医学会議」で発表した。6 例までが高血圧症や狭心症で治療を受けるなど病気を持っていたことが分かり、小林講師は「中高年になると何らかの疾患がある。山では病状が不安定になるので、登る前に十分体調を整えてほしい」と話している。
 発表によると、北アルプスや八ヶ岳連峰、戸隠山などでは97 年、9 人が病死し、このうち7 人はいわゆる突然死だった。46 −66 歳のいずれも男性で、死因は6 人が心筋梗塞(こうそく)などの心疾患、1 人は脳血管障害と考えられる。
 一緒に登山した仲間や遺族に文書や電話で問い合わせ、登山前の体調、通院歴を調べた結果、7 人のうち6 人は、高血圧症や糖尿病、狭心症などの病気を持っていたことが分かった。1 人はペースメーカーを付けていた。
 県警山岳救助隊によると、県内山岳で病死した登山者は94 −96 年の3 年間で計13 人だったが、97年は大幅に増えた。(信濃毎日H10 ・5 ・23 )


問題点
平成10 年のゴ−ルデンウイ−ク前後の山の遭難事故の新聞報道から以上のような記事がみられた。みんなのスポ−ツの時代は本来相当のベテラン登山家が、十分な訓練と体力を蓄積して、はじめて挑戦するものであり、登山にこのような努力も十分な装備もしないで安易に危険いっぱいの山に挑戦することは、結果的に多くの人々の時間と多額の遭難費用をかけることとなる。
 みんなのスポ−ツの時代、高齢者社会は、それぞれが自己の安全は自分の責任としての自覚をしっかりもち、危険に挑戦する以上それなりの努力をしてかからなければならない。


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