滑り台折損事故

第00002号
2002年7月24日 更新

滑り台折損事故(三重県の公園)

伊 藤  堯

東京女子体育大学名誉教授
日本スポーツ法学会理事

<事故の概要>
 平成10 年4 月30 日正午ごろ三重県桑名市の「九華公園」で、滑り台の円筒形の鉄塔部分がほぼ真ん中で折れ、愛知県から遠足に来て、滑り台に乗って遊んでいた同県佐屋町の町立小学校の児童7 人が地面にたたきつけられた。同小2 年のS 君が腰の骨を折り1 ヵ月の重傷を負うなど2 人が入院、5 人が軽傷だった。

 滑り台は高さ4 メートルの鉄塔が中心にあり、約2 メートルの付近で折れたとみられる。この公園は桑名市の公社が管理していた。桑名署は鉄塔の一部にさびがついていたのを確認。さびで金属が腐蝕したため、乗っていた児童の重さに耐え切れず壊れた可能性があるとみている。

 同署は業務上過失傷害の疑いで桑名市の関係者らから事情を聞いた。滑り台は1965 年ごろ(33 年前)に設置された。桑名市がシルバー人材センターに滑り台などの遊具の保守点検を依頼していた。昨年10 月に目視で点検した際には異状はなかった。(毎日H10 ・5 ・1 )

<問題点>
(1)保守点検の重要性
 鋼鉄性の一見頑丈そうにみえる滑り台の鉄塔が折れるということは、一般的には予想出来ないことである。しかし33 年も経っていたことから考えると、各所に腐蝕した部分があり、十分な点検をしていれば予想出来た事故とも考えられる。とかく保守点検は形式的になり、事故はめったに起きるものではないという予測のもとに行われる傾向にある。

 設置当初は的確に行われているが、事故なく長年経つにしたがって、形式的、事務的になるものである。どのように頑丈な建造物でも10 年経てばどこかに欠陥がでるものである。とくに屋外の建造物については腐蝕による傷害事故の危険性は十分考えられるところである。


(2)法的責任
 法的責任としては、保守管理の責任者については、刑法第211 条の業務上過失致死傷罪の問題であり、被害者の賠償責任については、国家賠償法第2 条の「公の営造物の設置管理の瑕疵による損害賠償責任」の問題として市の管理公社責任となる。公の営造物(遊戯具)の瑕疵の基準について判例は次のように説明している。
 「当該営造物の通常の利用者の判断能力や、行動能力、設置された場所の環境等具体的に考慮して当該営造物が本来備えるべき安全性を欠いている状態をいう」
(市立保育園スベリ台事故、松山地裁昭和46 ・8 ・30 )


幼児の遊戯施設の事故については、つぎのような判例がある。

○関連事故判例
*府営団地内の滑り台で4 歳の幼児死亡事故 (大阪地裁昭和54 ・10 ・5 )
*小学校の回旋シーソーでの傷害事故 (福岡地裁小倉支部昭和58 ・8 ・26 )
*都市公園のターザンロープから転落して小学校4年生が失明した事故 (東京地裁平成3 ・4 ・23 )

○関連記事
事故多発〜公園の遊具
楽しさと安全性のバランスが課題

公園の遊具で、子どもがケガをしたり、死亡する事故が相次いでいる。自治体や遊具メーカーが訴えられるケースも出ており、公園から一部の遊具を撤去した自治体もある。業界団体は遊具の安全基準づくりに乗り出している。ただ、基準に縛られると肝心の「遊びの楽しさ」まで失われる、と心配する声もある。


ブランコ撤去の動き
 神奈川県藤沢市の公園から、ゆりかご型のブランコが消えた。きっかけは昨年10 月、市内の公園で起きたある事故だった。
夕方4 時過ぎ、市内に住む小学3 年生(当時)の女の子が近所の公園で友人2 人とゆりかご型ブランコで遊んでいた。友人1 人をブランコに乗せ、もう一人の友人と両側から押し合っていたところ、女の子が転倒。揺れ戻ってきたブランコの座席底部と地面の間に右足を挟まれ、太ももの骨を折ったのだ。
 藤沢市は事故後、市内の同型ブランコを改良して再設置する方針だったが、検討の末、全面的に撤去した。この女児と家族は今年5 月、遊具メーカーと藤沢市を相手どり、損害賠償請求訴訟を起こしたが、ゆりかご型ブランコでは、死亡に至る事故も起きている。

 建設省はこの4 月、各市町村に通達を出し、公園遊具による事故の実態、整備点検の有無などの調査に乗り出した。国民生活センターに寄せられた子どもの事故の統計によれば、96 年の場合、家庭内も含め子どもの事故に関係した上位10 商品のうち、4 つまでをブランコなど遊具が占めた。その合計は120 件に上っている。
 事故原因は大きく分けて
@ 老朽化やメンテナンスの不備
A 構造・設計上の欠陥
B 使い方の問題
の3 つがあるようだ。

ただし、公園の遊具には設計・施工に関する安全基準がないため、現状では、構造上の欠陥か、使い方に問題があったのか、原因を究明する際にその線引きが難しい。(日経H10 ・8 ・5 )


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