アスレティックトレーナー10(最終回)

第00042号
2004年7月2日 更新

アスレティックトレーナー
高校部活動の現場から

Part10:最後に

米国NATA公認アスレティックトレーナー 

八田 倫子

 

<最後に>

 筆者がふだん仕事の対象とするのは、スポンジのように何でも吸収する世代である。10代が犯罪のニュースで取り上げられることが多いなか、ひいき目なのだろうがスポーツをしている子供たちには何か温かいものが流れている気がして、それを垣間見る度にホッとしたり、鳥肌が立つほど感動させられたりする。冒頭に述べた選手のように世界と戦えるほどの競技力を持てるのはほんの一握りの人間に過ぎない。そんな特別なレベルでなくとも、心身ともに打ち込める何かを持てるだけ、今の時代かなり奇跡的なことだと、嬉しく自分の選手たちを眺めている。
成人病や生活習慣病予防のためもあり、昨今やたらに生涯スポーツが叫ばれているが、若い頃にスポーツをしていなかった人たちは、運動していた人に比べてなかなか重い腰が上がらないのだそうだ。だから、選手にはせっかく縁があって始めたスポーツを、歳を重ねてから「また、やってみたい」と思えるような楽しさも沢山経験して欲しい。そのためには、安全な環境が必須である。筆者の高校トレーナーとしてのゴールは、選手に少しでも"トレーナー要らず"になってもらうこと。理想論だが、自身のポテンシャルやそれを超えたときに起こりうる身体の変化、その対処法について彼らが自分自身で理解し、そのための知識を求めて会得してくれるようになれば、競技成績があがったり、競技人生が長くなったり、指導する側に回る日が来た際に役立ったりするかもしれない。そして何よりも、自身を理解することやヒトのからだについて学ぶということは人生のなかで決して無駄な作業ではないはずだ。スポーツという小さな世界を通じて、選手が少しでも多くのことを得られるサポートができるよう、今後とも模索と精進を重ねてゆきたい。


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