アスレティックトレーナー6

第00038号
2004年3月25日 更新

アスレティックトレーナー
高校部活動の現場から

Part6:最も恐ろしい体験続き

米国NATA公認アスレティックトレーナー 

八田 倫子

 

<現場スタッフの養成で優先されることとは>
スポーツの現場で仕事をするトレーナーに必要とされる業務はさまざまである。そして、3年前のこの事件以来、筆者はテーピングやリハビリテーション等の通常トレーナーと聞いて連想されるような業務はごくごく小さな部分に過ぎないと、これまで以上に強く思うようになった。
トレーナーやスポーツ指導者を養成する類の講習会は、全国各地で大なり小なり行われているが、一体そのうちのいくつが、最も重篤な外傷が起きた際の対処方法をその講習内容に含んでいるであろう。救急車が来る間に行う最低限の処置、またはそれが技術的に無理であれば、最低限行うべきでない行為などを現場のスタッフであれば誰もが知っておく必要がある。心肺機能が停止した際の蘇生法(CPR)についても、毎年の更新を奨励されたい。トレーナーが自ら不適切な処置を行ったり、周囲のスタッフが「トレーナーがしていることだから大丈夫」、と誤った危険な処置が続行されるのをそのまま傍観したり、という事態だけは是非とも避けたいものである。

一昨年9月、アメリカでは現場にいたアスレティックトレーナーが人の命を救うというケースが2件クローズアップされた。ひとつは、高校のアメリカンフットボールの試合中に心停止を起こして倒れた主審を、その場に居合わせたアスレティックトレーナーが持参していたAED(自動体外式除細動器)で救ったという例(注:米国では所定時間の講習を受けた者であれば、医師の指示がなくともAEDの使用が可能。最近日本でも救命救急隊員にその利用を認められた)。もう一件は、下痢や胸部痛などの身体の不調を訴えた選手の容態が腑に落ちず、即座に医師の受診をさせた大学のアスレティックトレーナーの功績。身体的なコンディションも良く、22歳という若さのこのアメリカンフットボール選手の愁訴は実は心臓発作の前兆で、病院に到着する頃には発作が始まっていたがトレーナーの決断と搬送が早かったために命をとりとめたという例である(NATA News, November 2002号より引用)。アメリカでは毎年、こうしたケースがメディアで取り上げられる。
スポーツの現場で指導するスタッフ、特に選手の健康と安全を司るトレーナーにとって究極の最優先事項とは、致命的な外傷や後遺症残存を左右するような事故が発生した際に自分の選手を救うための、正しい知識とスキルの習得なのではないだろうか。

 


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