はじめの一躍5/11

第00026号
2003年6月30日 更新

はじめの一躍
〜井の中の蛙、海を渡る〜

三段跳び日本歴代3位タイ記録保持者

井原 福代

 

Episode 5 【自由の国 アメリカにおける個々の責任】  

私は、まずサンディエゴの気候の良さに驚いた。一年を通してエアコンのいらない気温はトレーニングに最適だ。これからどんどん寒くなっていく日本での冬期トレーニングを思うと、それだけで意欲が沸いてきた。そして競技場が多い。ほとんどの大学には、全天候型の400mトラックがあり、誰でも自由に利用することができる。大学の授業を行っている傍らで、おじさんがジョギングしていたり、ベビーカーに赤ちゃんを乗せたお母さんが散歩していたり、私も利用させてもらったミラコスタ大学のグラウンドでは94歳のおじいさんがハードルを跳んでいた・・・。日本ではあまり考えられない光景である。
アメリカでは、スポーツを楽しみとして行っている人が多い。休日に海岸沿いを車で走ると、たくさんの人がお気に入りの自転車でツーリングを楽しんでいる。その人たちの姿を見て驚いた。趣味といえども、ほとんどの人がヘルメットを付け、バイク用のウエアを着用し、レーサーさながらの格好で颯爽と走っている。給水ボトルも忘れていない。私も趣味でマウンテンバイクに乗ることが好きだが、ヘルメットを付けて走ったことは一度もない。なぜ、アメリカの人たちがここまで完璧な格好でツーリングしているのだろうか。それは自転車に乗ることの楽しみはもちろん、ツーリングに伴う危険性を十分に理解しているからだと思った。私は、スポーツ選手でありながら、スポーツにおける危険性というものを全く考えていなかったことを反省させられた。
アメリカでは、スポーツにおける安全性というものに関しては個人が責任を持っている。ひとりひとりがスポーツをする上で危険性を十分に理解し、安全に対しての意識が高い。だからこそ、誰もが自由に施設を使用することができ、スポーツを生活の一部として楽しむことができるのだろう。一方、日本ではスポーツに伴う危険性とその安全対策というものはあまり重視されていないように思う。車の出入りや人通りの多い公共の道路でスケボーやインラインスケートをする若者、その格好はもちろんファッション重視の服装である。公園でバスケットボールをする人たちの光景を見ても、足元はバスケットシューズではなくスニーカーである。実際にアメリカでスポーツを行う一般の人々を見て、日本でもスポーツにおける危険というものの理解を深める必要性を強く感じた。


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