指導者(コーチ)の立場と役割
インタビュー(1)

村 上 晃 史
那須Cross Sport Club代表
クロストレーニングコーチ
http://www.nasuinfo.or.jp/FreeSpace/nasucsc/
日本でトライアスロンがまだそれほど知られていないころ、トライアスロン留学のためアメリカに単独で渡り、生きた競技とコーチ業を学び帰国した。その後、数々のトップトライアスリートを育て、現在はナショナルチームジュニアコーチとして選手の指導・育成、システム作りに携わると同時に、那須高原でクロススポーツクラブを主宰し、トライアスロンの普及・発展に努める。
Q:アメリカにトライアスロン留学をされたということですが、そこで学んだことは何ですか。
アメリカでトレーニングに参加して感じたことは、誰もが目的意識を持ってトレーニングを行っているということでした。選手一人一人が自己の責任の下で一流のパフォーマンスを目指し練習を行っています。また選手の知的レベルも高く、コーチの指示に納得がいかなければ、納得いくまでとことん話し合うといったような場面もよく見られました。そういう意味でアメリカではコーチ自身にも高い知的レベルが要求されます。コーチの資格取得が難しいと言われるのはそのためです。
私は大学時代に陸上競技をやっており、その時の経験から言えば、日本でのトレーニングは、ほとんどの選手がコーチから与えられた練習メニューをただ機械的にこなしているだけで満足し、このように、自分が「こうなりたい」とか「こうしたい」というような明確な目的意識を持った選手は見受けられませんでした。ですから、私にはこの意識の高い集合体にはいることは非常に刺激的でもありました。
また、アメリカではスポーツは文化活動としての位置付けが高く、あらゆる人がスポーツに参加できる環境も整っています。多くの人がスポーツを楽しいライフスタイルを送るための一種のステータスのように考えています。
私がアメリカで習得したものは、「スポーツを楽しむ」ということでした。「楽しむ」と言っても、ただ単におもしろおかしくスポーツをすると言う意味ではなく、文化人として自分を成長させていく。その過程で面白みを見出す。それが彼等のスポーツの楽しみ方でした。
2000年夏。選手としても活躍!
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Q:アメリカでの経験も踏まえ、那須高原クロススポーツクラブでは選手にどのような指導しているのですか?
私は選手に一流の文化人を目指すようにと指導しています。その「文化人」とは何であるかを理解してもらうのは大変なことですが、要は、体を鍛えて技術だけを身に付けても人間として成長しませんので、同時に心も成長させていくことが大切だということです。コーチから練習メニューを与えられ、その練習について選手が理解しているか否かで、その選手の成長は全く違ってきます。その練習がどういうもので、なぜ必要なのかを選手自身が理解した上で行えば心も落ち着き、体もそのとおり動いてくれます。「心を乗せて練習に取り組め」とよく選手に言いますが、心が充実していれば体は自然と動いてくれますので、どんどん高いレベルの練習ができるようになります。そして、厳しい練習を課せられた時に生じるストレスなどもコントロールできるようになります。
また、私自身も一方的に練習メニューを与えるだけでなく、選手にこの練習はどういうもので、なぜ必要なのか等、十分に説明した上でトレーニングを行います。選手と頻繁に対話することにより、個々の選手の心のコントロール度を知ることができます。
Q:最近はITU世界選手権ナショナルジュニアコーチとして選手に同行される機会が多いようですが、海外遠征の時、どういうことをアドバイスされますか?
海外に行くと、ホテルでの滞在、食事、言葉の問題など、環境が一変します。その環境に慣れようとすればするほど、リズムを崩してしまいます。ですから、私は選手に「普段どおり」ということを強調します。普段の練習、生活習慣をよく思い出し、普段自分がやっていることに出来るだけ近い状況を作り出すようにアドバイスします。何も海外に行ったからといって特別なことをしなくてもいいのです。普段の環境をそのまま持って行き、海外バージョンにスイッチできれば、それほどリズムを崩すことなく結果を出すことができます。
それから、私は選手に海外では出来るだけその国の習慣、文化、言葉を学ぶように勧めます。エントリーなども自分達でやらせ、私が手伝うことはほとんどありません。「雑務は人に任せて自分は試合だけ頑張ればいい」というような意識の持ち方は感心しません。試合に出場する場合、現地に着いた時からそこを離れるまで、自分の試合に係わることは自分で責任を持って行うべきです。また、常にスポーツ選手らしいマナーを心がけ、スポーツ以外にも吸収できることがあればしっかり吸収することが大切です。英語の勉強は常に奨励しており、海外へ遠征に行った時などは出来るだけ選手にしゃべらせています。
たとえ間違った英語を使おうとも、その勇気と意欲は選手の自立性を培うのに多いに役立ちます。語学ができるから何かができるのではなく、ビジョンがあれば言葉の壁は以外と簡単に越えられるものです。