1.安全配慮義務違反
1回目の測定の疲労が十分回復しないまま泳がせたため溺死するに至ったとの原告の主張に対して、裁判所は、2回目の測定ため泳ぎ始めるまでにあまり時間がなかったことが認められるが、疲労により溺れたと認められる証拠はないうえに、Aの年齢、校内水泳大会で優勝したことがあることなどから、疲労を回復しないまま泳いだとは認められないとした。
2.監視義務違反
原告は、水泳指導に関する資料を証拠に、「水泳場には監視台が必要で、全体の監視者をおかなければならないのに本件プールに監視台はなく、全体監視者もいなかったことは、発見を遅らせ溺死に至らしめた」と主張した。
裁判所は、「担当教諭は目の前で溺れたAを直ちに引き揚げたのであり、仮に監視台や全体監視者があったとしても、発見がより早くなったと認めることはできない。監視台がなかったこととAの溺死との間には因果関係がない」とした。
3.救助体制整備義務違反
原告は、「水泳の授業では常に事故が予測され、学校責任者および教師は事故に備えて迅速に救助できる体制を整えておく義務があるのに、本件中学校では連絡体系の相談、検討を全くしていない。そのため当日Aに対する救助担当者は指導にあたっていた担当教諭のみで、溺れた際に引き揚げる者も事故を職員室に連絡する者もいなかった。また、授業中、教師は水着着用の義務があったのに、担当教諭はトレパン、トレシャツ姿で指導にあたっていて直ちに水に入り泳ぐことができなかった」とし、救助体制の不備を主張した。
裁判所は、「担当教諭がトレパン、トレシャツ姿であったこと、特別の救助体制を整えていなかったことは認められるが、それだからといって、本件中学校水泳授業の体制に落ち度があったということはできない。担当教諭は直ちにAを引き揚げ、学校からの救急官署への連絡も時間をおかずになされたのであるから、救急体制整備義務違反があったとの主張は失当である」とした。
4.救助義務違反
原告は、「溺者の蘇生法が、気道確保、人工呼吸、心臓マッサージの順にすべきとされており、意識のない場合は直ちに気道確保を行わなければならないのに、担当教諭はAの状態を心臓まひと判断し、水を吸引したとは全く考えず、溺者を前に気道確保、人工呼吸をすることなく、心臓マッサージしかしなかった。これらの義務違反のためAを回復させることができずに死に至らせた」と主張した。
裁判所は、「溺れた者に意識がなくても、呼吸をしていれば人工呼吸の必要がないことが認められ、教諭らの観察したところを総合検討すると、Aの呼吸が弱いながらも継続していることが確認されたものの、鼓動は確認できないほどに衰弱していたということができ、担当教諭がこれらの事情から判断して蘇生法の第1段階として心臓マッサージを選択したことは必ずしも不相当であったということはできず、かつ、突発事故におけるとっさの判断であることも考慮すると、担当教諭の蘇生法の実施につき過失があったということはできない」とした。
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