市の設置したプールの一部を専用使用することを認められていた水泳クラブで、サブコーチとして雇用され、会員(小・中学生)の水泳指導にあたっていた高校生が、プールサイドに置いてあったクラブ所有のタイム測定用電気時計(タイマー)を移動させようとして、タイマーからの漏電により感電死した。
死亡した高校生の両親が、水泳クラブの代表者とタイマーを製造した会社ならびにプールの設置者である市に対して損害賠償を請求した。
第一審の大阪地裁はそれぞれの過失責任を認定して損害賠償の支払いを命じた。この判決に対して、クラブの代表者ならびにタイマーの製造会社との間に和解が成立したが、市はこの判決を不服として、大阪高裁に控訴した。控訴審において裁判所は控訴人(市)の請求を認め、第一審判決を覆して、本件事故について市にはプールの管理・運営上の責任はないとして、原告の請求を棄却した。
原告は最高裁に上告したが、最高裁は上告棄却の判決をした。
本稿では、控訴審判決を中心として事故責任を検討する。
最近、公営プールを使用して水泳指導をするクラブや、水泳協会が専用使用するケースが多くあり、社会体育の振興という点からは意義あることであるが、事故に際しての責任を利用契約の際明確にしておく必要がある。特に、団体、クラブ等の法的責任の主体が明確でない場合、損害賠償をめぐって深刻な問題となり、本件のように公営プールの場合、設置者である地方公共団体が損害賠償を請求されることになる場合がありうる。社会体育はあくまで住民の自主的活動であり、地方公共団体はそれを指導・助言はするが、監督・統制はしないと社会教育法は規定しており、その直接的責任は活動者自身が負わなければならないのが原則である。このような活動をする団体にとって参考になる事故判例である。
(大阪高裁 昭和60年6月26日判決)
(最高裁 昭和61年7月18日判決)
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