高校生登山中落石死亡事故1/3
(神戸地裁 平成4年3月23日判決、棄却、控訴、判例時報1444号、114頁)
東京女子体育大学助教授
入澤 充
ハイキング気分で気軽に登っての事故や本格的登山の中での事故など今年も山の事故が多い。山を楽しむことを目的にしながらも一度事故に遭遇したら、リーダーや指導者、企画者は「業務上過失」を問われることもある。
この事件は「安全配慮義務」「注意義務」及び「業務上過失」が問われたものである。判例の中から日頃の指導者の注意すべきことを確認していただきたい。
1. 事故はどのようにして起こったか
私立灘高校ではほぼ20年以上にわたって3年生を対象に、教育活動の一環としての特別教育活動である六甲山への遠足を実施していた。登山方法は5つのコースを指定し、その中から生徒に自由に選択をさせ頂上で登山チェックした後に下山をさせる方法を採っていた。また本件登山計画は遠足係の教諭を中心に各クラス2、3名の生徒の意見も聴取して策定されていた。
被害にあった生徒はワンダーフォーゲル部のベテランで登山について十分な知識と経験を有しており、その生徒の所属した班は同部のキャプテンや運動部のリーダーで大半が構成されていた。その班が選んだコースは所要時間が約2時間程度、平易で安全なコースを登山した上バス利用で下山するというものであったが、被害生徒の属する班は学校指定外コースの登山を計画し、その変更も予め決めておきながら担当教諭に届けることなく登山を行った。
本件事故現場の登り口付近には工事用の木製梯子が登山者によって立てかけられており、班員は梯子とその上のロープとを利用して一人ずつ一定の間隔をおいて順次登りはじめた。
被害生徒は13人中の12番目に登り始めたが、前の班員が約10メートル上方を登っている最中、被害生徒が梯子の中間位に差しかかったとき、突然落下してきた直径約30センチメートルを超える落石が頭部を直撃し、頭蓋骨骨折、脳挫滅及びくも膜下出血の傷害を受け、ほぼ即死の状態で死亡した。
<次回に続く:事件の争点と裁判所の判断> |