スキー滑降コースでの対人衝突事故3/3

第00083号
2004年5月6日 更新

スキー滑降コースでの対人衝突事故の過失責任

「スキー滑降コースでの対人衝突事故」3/3

(東京地裁、平成7年3月3日判決 損害賠償請求事件、判例時報1560号114頁)


福井大学教育学部 

助教授 水沢 利栄

 

4.本判決の解説と問題点の整理

この判決は、上方のスキーヤーの責任および下方に立ち止まっているスキーヤーの責任について、その責任を明示している点で注目される。これまで、立ち止まっているスキーヤーに上方から滑走してきたスキーヤーが衝突してけがをさせるという事故の裁判は数件ある。いずれも衝突に至った上方からのスキーヤーに対して前方の安全確認をする注意義務を怠ったとして、主要に賠償責任が認められている。

パトロール員が滑走中に下方の安全を確認しないままコブでジャンプしたため、下方で転倒していた女性の顔面に激突し右目失明などの重傷を負わせた事故の判決では、違法性が阻却されるか否か問題となったが、パトロール員のジャンプにおよんだ行為について「その作法と過失の程度において到底社会的に容認されうるものではない。」として、重過失と認定し、損害賠償を命じている(東京地裁昭和39年12月21日判決)。見通しの悪い場所で、滑走したり、ジャンプしたりする場合には、下方に人がいないことを確認して滑ることが求められる。どうしても滑走・ジャンプしなければならない状況であれば、下方の安全を確認する見張りの人を付けたりすることが求められる。特に上級の技能と経験をもつスキーヤーにあっては、下方にいるスキーヤーの安全を確認すべき義務が大きいといえよう。

また、下方で立ち止まっている、あるいは転倒したままでいるスキーヤーに対しても、衝突されるような場所にいること自体、危険な行為として責任があり、上方の安全を確認するなどの注意義務も要求される訳である。見通しの悪くなっているゲレンデで転倒していたスキーヤーに、上方から滑走してきたスキーヤーが衝突し、顔面に傷痕が残る傷害を与えた事故の裁判では、上方からのスキーヤーの責任を認めるとともに、転倒していた被害者に対して転倒後に速やかに退避措置をとらなかったとして4割の過失相殺を認めた事例がある。
ただし、次のような場合には上方のスキーヤーよりも下方のスキーヤーの責任となる。
○立ち止まっている人が上方の安全を確認しないまま滑り始め(上方のスキーヤーの合理的な判断に反する下方スキーヤーの動き)、それに上方からのスキーヤーが衝突したような場合。
○スキーの大回転などの競技滑走中に、滑走コース上にいる旗門員や一般の人に衝突した場合。
また本件では、スキー場には、プレジャンプ台や危険な箇所について、予めスキーヤーに気付くように注意の看板や減速を指示する標識を設置しておくことの重要性が示されていたといえよう。


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