スキー滑降コースでの対人衝突事故1/3

第00081号
2004年4月14日 更新

スキー滑降コースでの対人衝突事故の過失責任

「スキー滑降コースでの対人衝突事故」1/3

(東京地裁、平成7年3月3日判決 損害賠償請求事件、判例時報1560号114頁)

福井大学教育学部 

助教授 水沢 利栄

スキー場の初・中級者用の滑走コースの見通しの悪い段差の下方でサングラスを拭いて立ち止まっていた初級スキーヤーが、段差部分でジャンプした後続の上級者スキーヤーに衝突され下腿骨骨折の傷害を負った事故で1,804万円余の損害賠償を請求した。裁判所は、衝突した後続のスキーヤーに安全を確認せず減速しなかった過失を認める一方、立ち止まっていたスキーヤーの過失相殺を3割とし、745万円余の賠償を命じた。

1. 事故はどのようにして起こったか

スキー初級の腕前の会社員Xは友人と新潟県のFスキー場に来て、初・中級者用のCコースを滑走していた。Xはコース途中にある斜度の変わり目(平たんな斜面から斜度10度となる地点)の下方地点で曇ったサングラスを拭くためにコースの中で立ち止まっていた。その斜度の変わり目地点から下方の付近は、やや左に折れ曲がっているために、上方からは斜面の下を見通すことはできない場所であった。
一方、Yは大学4年生で、スキースクールのインストラクターをするほどの技量をもち、この日は、Cコースで開催されたダウンヒルレースに友人2人と出場しようと思い来場したが競技終了間際で出場は断念、しかし競技の行われたCコースを滑降したいと考え3人で同コースのスタート地点に到着した。Cコースは大会で使用されたポールは撤収され、コースはすでに一般スキーヤーに開放されていた。Yを先頭に3人は何人かのスキーヤーを追い抜きながら滑走し、緩斜面の地点で前方30メートル地点に斜面の変わり目地点を発見、左ターンで減速しようとしたがコース幅が狭くて減速できず、斜面の変わり目に差し掛かった。その時、前方の滑走方向にXがいることに気付いた。斜面の変わり目の先は段差(ダウンヒルレース大会のためプレジャンプできるように雪を盛りあげていた。)になっておりこのためジャンプの体勢となった。ジャンプしたときYはこのまま着地すればXに体当たりすると思い、とっさに左ターンをしようと試みて体は横に逃がせたが、右足がXの右足に衝突し、Xは右下腿骨骨折の傷害を負った。事故当時斜度の変わり目の手前には、コースが狭くなることを示す標識と、ゆっくり滑ることを指示する標識が立てられていたが、XもYもその標識には気付かなかった。

<次回に続く:当事者の主張と裁判所の判断>


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