スキーツアー参加者同士による
スキー中の接触事故の賠償責任
「スキー場における接触事故」3/3
(千葉地裁、平成9年7月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1639号86頁)
福井大学教育学部
4.本判決の解説と問題点の整理
この判決は、滑走中のスキーヤー同士による対人衝突事故について、双方の注意義務と過失割合について示した点で非常に注目される。
従来、滑走中のスキーヤー同士による対人衝突事故の裁判においては、スキーというスポーツ中の行為が、正当行為やまたは危険の受忍の原則を適用され、違法性が阻却されるかどうかということが観点に含まれたりしていた。しかし、最高裁(平成7年3月10日判決)が「スキー場において上方から滑走する者は、前方を注視し、下方を滑走している者の動静に注意し、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負う」という上方のスキーヤーの注意義務に焦点が当てられた判断を示した。つまり、加害者、被害者の過失の度合いに応じて、各自の不法行為責任を相対的に認定しようということであり、衝突に至った双方の過失割合によっての判断をおこなうことが最近の傾向のようである。
上方のスキーヤーの注意義務として前述のことがあげられる理由には、ゲレンデを滑走するスキーヤーには、人と衝突しないように滑るということが、大原則として求められるからである。滑走中に他の人と衝突した場合、衝突に至らないように注意する事項が存在したはずであると考えることができ、衝突回避のための一次的な基本的なこととして上方から滑降してくる者の注意義務が求められる。
本件は、衝突に至るスキーヤー同士が、同じスキーツアーに参加した仲間であり、事故当時も行動を共にするなど、非常に接近したグループの中での事故である。また、緩斜面で「上方」にいるということは、下方にいる者を優位に認識することができるほどの視界があったのか、本件のように集団で滑っている場合には、上方、下方の関係、言い換えると、先行する者と後続の者との位置関係はターンするごと、スピードにより実に微妙に入れ代わったり、位置の認識が主観的にも客観的にも把握することが困難になることがあるであろう。裁判所は、ターンの際にYが前方を注視していなかったことを認めているが、そのことをもってYに過失があると判断するには、実に難しいものがあったと思われる。しかし、結果的に接触の事態に至ったわけであり、Yの過失を肯定しつつ、Xの過失も認めた点で意義がある判決である。
本判決では触れられなかった観点であるが、対人衝突事故の責任として、スキービンディングの調整の責任も考えられる事項である。転倒した際にスキーとスキー靴を保持しているスキービンディングが正常に解放されたか、否か、それで傷害の程度は大きく異なってくる。解放されていれば脚の骨は折れなかったかもしれない、けがをしなかったかもしれない、という状況では、ビンディングの調整は正しく行われていたかについて、取り付けした販売店、あるいはレンタルスキー会社、場合によっては被害者本人の責任となることが考えられる。PL(製造物責任)法との関連もあり、当然、双方の損害賠償の問題に直接関わってくることである。
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