スキーツアー参加者同士による
スキー中の接触事故の賠償責任
「スキー場における接触事故」2/3
(千葉地裁、平成9年7月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1639号86頁)
福井大学教育学部
2.当事者はどのように主張したか
<原告Xの主張>
【上方を滑走していたYは衝突をしないよう安全保持する義務があった】
本件事故は、YがXの後方から、Xの前を横切るように滑走したことにより起きたものである。スキーでは、上方を滑走する者に、下方にいる人と衝突しないようにスピードやコースを調整すべき義務があり、YはXの上方から、Xとの距離を十分に保持しないまま、Xの進路を横切って本件事故を起こしたもので、Yには安全保持義務違反の過失がある。
<被告Yの主張>
【事故はX自身の責任】
Xのスキー板のトップ部分がYのスキー板のテール部分に接触し、Xが尻もちをつく形で雪上に座り込んだものであって、Yに注意義務違反はない。
3.裁判所はこの事故をどのように判断したか
<裁判所の判断>
【Yには:衝突しないことを確認してターンすべき注意義務を怠った過失がある】
被告のYは、上方で原告のXを追い越した後、ターンして方向を変えようとした。Xの滑る位置や方向によっては、下方にいるXの進路を横切る形になるのであるから、Xの動静に注意して、Yとの接触や衝突のおそれのないことを確認してターンすべき注意義務があった。Yにはこれを怠った過失があるというべきである。として裁判所はYには過失があったと判断した。
【Xには:安全を確かめてからターンを開始すべき注意義務があったが、それを怠った。過失相殺は2割】
Xにも、ターンしてその滑降の方向を変えるにあたっては、周囲を滑降している人の動静に注意して、安全を確かめてからターンを開始すべき注意義務があるのに、これを怠った過失がある。と判断した。また、損害負担の公平を図るうえからは、このXの過失も考慮すべきであり、X、Y、双方の過失の内容、ことにー般的には上方から滑降してくる者に接触や衝突回避のための第一次的な注意義務があると解されることなど諸般の事情を勘案すると、両者の過失割合は原告が20パーセント、被告が80パーセントと認めるのが相当であると判断した。
<次回に続く:解説と問題点の整理> |