スキーツアー参加者同士による
スキー中の接触事故の賠償責任
「スキー場における接触事故」1/3
(千葉地裁、平成9年7月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1639号86頁)
福井大学教育学部
助教授 水沢 利栄
カナダへのスキーツアーに参加した原告と被告の女性スキーヤー同士がスキー場で滑走中に接触、転倒し傷害を負った事故について、事故は被告が原告の後方から原告を横切るように滑ったことにより発生したとして、日本に帰国後に生じた治療費や休業補償等の275万円余の賠償を求めた事件で、裁判所は、上方から滑走してきてターンしようとした被告スキーヤーの過失を認める一方、原告にも2割の過失相殺を認め、139万円余の支払いを命じた。
1. 事故はどのようにして起こったか
スキーヤーX(原告)とスキーヤーY(被告)は、平成5年3月末に7日間の日程のFスキークラブ主催のカナダへのスキーツアーに参加した。Xはスキー歴15年、Yは20年で、いずれも中級の技量のスキーヤーであった。現地のWスキー場において、ツアー参加者は、ガイドから昼食のため下方のレストハウスに向かうように指示されて、初級から中級者向けの比較的緩斜面のゲレンデを滑っていた。
Xは斜滑降で最初は右側に向けて滑って行き、途中で向きを変えるべくー旦停止した。そこにはXだけでなく、Yや他のツアー参加者ら5、6人が集るようにしてー旦停止した。次にXはYよりも先に今度は左側に向かって滑り始め、さらにターンして右側に向きを変えたときに、左方からXの前を横切るように滑ってきたYのスキー板の後部に、Xの右足のスキー板の前部が接触して、そのあおりでXは左側に尻もちをつくような形で転倒した。
一方、Yは先に滑り始めたXを右斜め前方に見ながらXの上方を同様に左方向に滑って行き、Xを追い越した後、ターンして右方向に滑り始めた直後に、そのスキー板の後部がXのスキー板に接触してしまった。
X及びYとも、ターンするにあたって互いに相手を確認しておらず、接触によってはじめて気づいた。Xはこの転倒事故により右脛骨高原骨折の傷害を負い帰国後、同年4月から翌年6月まで2つの病院に通院して治療を受けた。
<次回に続く:当事者の主張と裁判所の判断> |