マラソン練習中の死亡事故3/3

第00077号
2004年3月2日 更新

「マラソン練習中の死亡事故」3/3

(大阪地裁堺支部、平成5年12月12日判決 損害賠償請求事件、判例時報1511号113頁)

弁護士 望月 浩一郎

3.本判決の解説と問題点の整理

公刊集に掲載された長距離走での事故判例としては、中学生の急性心不全死事故(東京地方裁判所昭和56年6月29日判決・判例時報1027号90頁)、高校生の心不全死事故(大阪地裁昭和48年11月20日判決・判例時報749号87頁、静岡地裁富士支部昭和63年10月4日判決・判例時報1309号131頁、東京地裁平成7年3月29日判決・判例タイムズ901号216頁)があり、負担の大きなスポーツという点で類似する事案としては、成人のトライアスロンでの水泳中の急性心臓死事故(大阪高判平成3年10月16日・判例時報1419号69頁)がある。

運動時の突然死は、まれではなく、高校生の場合で10万人あたり年約1.9人発生しているとの報告もある。急性心臓死に関しては、未だ医学的な解明が十分ではないが、心臓などの循環器系の何らかの基礎疾患が関係をしているケースがあることが指摘されている。
学校保健法は、「児童、生徒‥の健康の保持増進を図る」ため、児童らの毎学年定期の健康診断を義務づけ(6条)、同診断にもとづく疾病の予防措置を行い、または治療を指示し、ならびに運動及び作業を軽減するなど適切な措置をとらなければならない旨事後措置についても義務を課している(7条。同法施行規則7条)。また学校医の設置を義務づけ、学校医は学校における保健管理についての専門的事項に関し技術及び指導に従事することとされている(同法16条)。

急性心臓死の原因に対する医学的解明の到達点にかんがみれば、学校における健康診断は、スクリーニングの機能を果たすにとどまり、健康診断での異常所見が得られた児童生徒を対象として精密検査を実施した上で、当該児童生徒、保護者、医師、教員の間での協議をして、負荷の大きな行事への参加の可否を決定する作業が必要である。
さらに、教員は、児童生徒の状況を把握する一般的義務があり、健康診断の結果にかかわらず、個々の児童生徒の動静を注視し、負荷の大きな行事への参加が健康状態に悪影響を及ぼす可能性を認めた場合には、適切な経過観察措置ないし参加の停止・中止措置義務がある。

本件においては、
@ 本件マラソンを含むカリキュラムが一般的な小学生6年生を対象として特に過重でないこと、
A Aに心臓の異常所見は認められていたものの、小学校3年生以降体育実技においても強い運動可とされていたこと、
B Aの発症前の諸事情からも異常を疑わせる所見がないこと、
との認定事実を是認するならば、C学校長、D教諭の注意義務の懈怠を認めることはできないとの本判決の結論は相当である。


スポーツネット・ジャパン お問合わせ リンク集 よくある質問と答
c2002,SPORTSNET-JAPAN.COM. All Rights Reserved.