マラソン練習中の死亡事故2/3

第00076号
2004年2月19日 更新

「マラソン練習中の死亡事故」2/3

(大阪地裁堺支部、平成5年12月12日判決 損害賠償請求事件、判例時報1511号113頁)

弁護士 望月 浩一郎

2.裁判所はこの事故をどのように判断したか

XはYに対し、C校長及びD教諭の以下の過失を主張し、国家賠償法1条1項ないし民法715条1項による損害賠償請求をしたが、本判決は、Xの主張をいずれも認めず、請求を棄却した。

1)カリキュラム作成にあたっての過失
Xは、学校長には、Aのように心臓疾患を有する児童が大きな体力的負担を伴う行事をカリキュラムとする場合には、専門家たる医師の意見を反映させる措置をとるべき義務があるところ、C校長はこの義務に違反した旨主張した。

本判決は、C校長は、

@ 定期健康診断の結果及び医師の意見を把握していたこと、
A Aが各種学校行事に参加しながら何ら異常がなかったことを把握していたこと、
に照らして、「Aの心室性期外収縮の程度、態様等に特段の考慮を払わず、医師の意見を全く聴くことなく漫然と本件カリキュラムを作成したということはできない」と判示した。

2)カリキュラム実施にあたっての過失(1)−C校長の過失
Xは、学校長には、大きな負担を伴うカリキュラムを実施する場合には、
@ 近接した日時に健康診断等を実施し、児童の身体的欠陥の発見に努める義務、
A 身体的欠陥が存在するか若しくはその疑いがある場合には、カリキュラムの実施について、担任教諭に対し特に注意を払うように指導すべき義務、
があるところ、C校長はこの義務に違反したと主張した。

本判決は、
@ 本件カリキュラムの実施は6年生にとって体力的に特に多大な負担を課するものであったとまでは認められないこと、
A B小学校では毎年10月ころ定期健康診断を実施していること、
B 心臓に異常のある児童については、担任教諭にその内容を知らせ、心臓疾患検診管理指導表等によって平素から管理していたこと、

などの認定事実の下では、「本件カリキュラムの実施にあたり、近接した日時に、特にそのための健康診断を実施し、担任教諭に対して特別の指導を与えるまでの義務を本件小学校長に認めることはできない」と判示した。

3)カリキュラム実施にあたっての過失(2)−D教諭の過失@
Xは、担任教諭には、カリキュラムを実施していくうえで、個々の児童の体力等に応じて個々具体的かつ弾力的に適切な配慮をすべき義務があるところ、D教諭はこの義務に違反したと主張した。本判決は同義務があることは認めるも、

@ 本件事故2日前の耐寒登山ではゆっくり登山させ、遅れた児童の速度に合わせて登山させるなどの配慮をしていること
A マラソン練習は、完走が目的であって個々の児童が自己のペースで走るように指導していたこと、
B 個々の児童からの申し出や父母からの通知によって、個々の児童の体調を把握して、体調不良の児童には必ず参加をやめさせる措置をとっていたこと、
などの認定事実の下では、「D教諭らは、個々の児童の体力等に配慮して本件カリキュラムを実施していた」と判示し、義務違反を否定した。

4)カリキュラム実施にあたっての過失(3)−D教諭の過失A
Xは、担任教諭には、Aの健康状態を確認し、また、体調の悪い児童や疾患のある児童には、休息をとらせたり、ゆっくりと走るようになどと個々の児童の体調等に合わせて具体的に指導する義務があるところ、D教諭はこの義務に違反したと主張した。本判決は同義務があることは認めるも、
@ Aは、耐寒登山に参加した際及びその後において、特に異常はなく、
A 本件事故発生当日のマラソン練習参加に際しても、特に体の不調を訴えることがなかったこと、
B D教諭らがマラソン練習前に個々の児童の体調を確認し、その結果、6年生女子120名中31名が見学し、9名が参加を取り止めたこと、
C D教諭は、常日頃から、児童に対して体調が悪いときは早めに申し出るように指導していたこと、
との認定事実の下では、「D教諭は前記の各注意義務を尽くしていたというべきであるから、同教諭に原告ら主張の過失があったと認めることはできない」と判示した。

<次回に続く:解説と問題点>


スポーツネット・ジャパン お問合わせ リンク集 よくある質問と答
c2002,SPORTSNET-JAPAN.COM. All Rights Reserved.