「マラソン練習中の死亡事故」1/3
(大阪地裁堺支部、平成5年12月12日判決 損害賠償請求事件、判例時報1511号113頁)
弁護士 望月 浩一郎
心臓疾患を有する小学生Aは、マラソン大会前日の合同練習で約2km走ったところで急性心不全で死亡した。Aの両親Xは、学校長及び教諭のカリキュラム作成、実施についての過失を主張して損害賠償請求した。判決は、Xのいずれの主張も認めず、請求を棄却した。
1.事故はどのようにして起こったか
Aは、Y市立B小学校6年に在籍する女子であった。
B小学校では、平成2年2月7日の授業時間に、Aを含めた6年生全員が、翌日予定されていたマラソン大会のため、担任のD教諭らの指導の下、校庭(1周200m)を2周した後、学校の周囲を走る合同練習(全長約2,050m)をしていたところ、Aは、ゴールの手前約80mの地点で突然倒れ、直ちに病院に搬送されたが約2時間後心室性期外収縮に起因する急心不全のため死亡した。
心室性期外収縮とは、心房からの刺激を受ける前に心室自体からの刺激によって心室が収縮する状態をいい、不整脈の一種である。期外収縮には基礎疾患のあるものとないものがあり、基礎疾患のないものは生命に対する危険度は少ないといわれている。Aの健康診断結果及び医師の指示は以下のとおりである。
@ 昭和61年1月(Aが2年生の時)実施の定期健康診断
心室性期外収縮が発見され、精密検査の結果、Aの心室性期外収縮は基礎疾患のない良性のものと診断された。管理区分はE3=要観察(異常あるとき及び1年に1ないし2回の観察を必要とする)とされ、医師は、Aに対し、耐寒かけ足、耐寒遠足、登山、体育系クラブ活動等の各種学校行事への参加を、体調良好時に限る旨の条件を付けて許可した。
A 昭和61年10月(Aが3年生の時)実施の定期健康診断
心室性期外収縮が認められたが、管理区分はE3(体育実技は軽い運動、中等度の運動及び強い運動のいずれも可。部活動は軽度、高度いずれも可)。
B 昭和62年10月(Aが4年生の時)実施の定期健康診断
心室性期外収縮は認められなかったが、管理区分は前年と同一であった。
C 昭和63年9月(Aが5年生の時)実施の定期健康診断
心室性期外収縮(散発)が認められ、管理区分は前年と同一であった。
D 平成元年10月(Aが6年生の時)実施の定期健康診断
心室性期外収縮は認められなかったが、管理区分は前年と同一であった。
前記定期健康診断に基づく心臓疾患検診管理指導表及び医師の意見書は、いずれもB小学校に送付され、D教諭は、保健担当教諭と協議の上、Aの心室性期外収縮について、管理区分E3であり、運動や各種行事に他の児童と同じように参加させてよいが、本人から体調不良等の訴えがあったときは慎重に対処しなければならない旨認識していた。
Aは、体育授業、各種行事をほとんど休むことなく、5年生時のかけ足訓練、マラソン大 会等の各種学校行事に参加していたが、本件事故に至るまで何ら異常はなかった。
<次回に続く:裁判所の判断>
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