ゴルフ練習場で、テイクバック中のクラブが
隣接する打席の練習者にあたった事故
「ゴルフ練習場での負傷事件」1/3
(静岡地裁、平成7年3月10日判決 損害賠償請求事件、判例時報1554号130頁)
弁護士 望月 浩一郎
Y1ゴルフ練習場で、Y2が3番ウッドを持ってテイクバックしたところ、クラブヘッドが隣接する打席のXの左目にあたり負傷した。Xは、Y1に対してゴルフ練習場の設置管理に瑕疵があることなどを主張し、Y2に対して後方打席の動静に注意を払わないままテイクバックした過失を主張して損害賠償請求した。判決は、Xのいずれの主張も認めず、請求を棄却した(控訴後、控訴棄却で確定)。
1.事故はどのようにして起こったか
Y1が管理運営するゴルフ練習場は、2階建てのいわゆる打ちっぱなしのゴルフ練習場である。Y2は1階打席10番打席で、Xは同11番打席で練習をしていた。各打席部分は、同じ構造である(図参照)。スタンスマットには円でスイングの際の左右の足を置く範囲が示されている。
自動打球セット機(以下「セット機」という)は、全体の長さが1.5mあり、通路側の位置に練習用のボールを注ぎ込む給球装置部分がおおよそ膝頭の下程度の高さで設けられ、そこから流し込まれたボールは、セット機内部を伝ってグリーン方向の先端付近まで転がり、その先に設置されたティーアームによって、ティーマット上に自動的に供給される仕組みとなっている。セット機には、隣接する打席にボールが転がらないよう半円状の遮蔽板が設けられている。そして、右遮蔽板面上に長方形の白色の下地に赤字で「注意」と大きく記載され、黒色で「ボールを入れる時、前の打席の人のスイングに気を付けて下さい」という警告文が掲示されている。
練習者は、籠に入ったボールをセット機に流し込む方法でボールをセッティングする。セット機に対して正面から注ぎ込んだ場合では、若干中腰となり、顔は給球装置部分のほぼ真上に位置して下を向き、頭部は前記遮蔽板を越えて隣接する打席内に入り込まない。
Y2は、複数のクラブを使用して練習し、1pないし1.5p程度グリップを余してクラブを握った。Y2は、スイング軌道がいわゆるアウトサイドインで右肩が突っ込むため、練習に際してはそれを直すこととボールを真っすぐ飛ばすことを心掛けていた。
Y2は、被告打席のスタンス位置に近いアイアン用マットの上にボールを置き、3番ウッドのクラブを用い、アイアン用マット上のボールを打つためテイクバックに入り、まさにクラブを振り下ろそうとしたとき、ボールが転がる音と人が倒れる音を聞いて異変に気づき、スイングに入らずそのままクラブを下ろした。
Xは、本件事故の直前、X打席のセット機ボール注ぎ口に籠から練習用のボールを入れようとして中腰になったところ、Y2のクラブヘッドがXの左眼にあたり、左眼打撲等の傷害を被った。
<次回に続く:裁判所の判断> |