「中学校体育正課授業柔道負傷事故」1/3
(松山地裁、平成5年12月8日判決 損害賠償請求事件、判例時報1523号139頁)
中京大学体育研究所 吉田 勝光
中学校3年生の体育の授業において、担当教諭の指示で、課外活動で柔道を習っていた同級生から大内刈りを掛けられた生徒が、受け身に失敗した。授業終了後、意識不明となり、特別便の船と救急車で病院へ運び込まれたが、急性硬膜下血腫と診断された。手術を受けたが、後遺症が残った。裁判所は、担当教諭に過失があったとした。
1.事故はどのようにして起こったか
O島中学校3年生Xは、1週間に3時間の体育授業を受けている。同中学校では、昭和60年4月18日の柔剣道場の新築に伴い、体育実技に柔道を採用した。柔道の担当教諭はN教諭であり、20名の男子生徒に対して行われていた。Xは、それまで柔道の経験はなく、運動が不得手で運動能力も劣っていた。これをN教諭は知っていた。授業は、61年9月の後半から行われた。受け身の練習については、次のとおりであった。
@第1回目…体育館でマット運動及び跳び箱を利用した飛込み前転の練習。次回から柔道であるとの連絡はしていない。
A第2回目…配付したプリント(技、受け身等について触れたもの)を説明した後、同級生の柔道部員Aの真似をして受け身の練習。
B第3回目…柔道部員Aの真似をして受け身の練習。そしてN教諭は、生徒に対し、前回り受け身ができるか試した。Xは、1、2度失敗したが一応合格した。
C第4回目…配付したプリント(柔道の歴史等)の説明後、10人ずつで前回りの受け身を中心にして受け身練習をさせた。さらに、2人1組となって投げ技の基本となる体くずしの練習をさせた。
その後、N教諭は、実践的な受け身を身に付けさせるため、生徒の中からXを含む生徒6人を選んで前に並ばせ、柔道部員Aに命じて、生徒6人に順番に大内刈りを掛けさせて受け身の練習をさせた。Xを含む生徒6人は、柔道部員Aに1回目の大内刈りを掛けられた際、いずれも受け身を失敗して痛がっていた。Xは、柔道部員Aから2回目に大内刈りを掛けられたとき、後ろに倒れ、その際、倒れた反動で後頭部を打った。
<次回に続く:裁判所の判断> |