県立高校漕艇部ボート転覆死亡事故1/3

第00066号
2003年10月29日 更新

「県立高校漕艇部ボート転覆死亡事故」1/3

(青森地裁、平成5年9月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1505号127頁)

小笠原  正

東亜大学法学部 教授

 

県立高校漕艇部の生徒がシングルスカルの練習中ボートが転覆し、水中に投げ出され水死した事故について、顧問教師の注意義務違反の過失が認められたが、生徒にも五割の過失があったとして、過失相殺した事例である。

1.事故はどのようにして起こったか

県立高校2年生のA君は、ボート部に所属していた。平成2年7月19日4時頃、合同艇庫前付近の川でボート部の練習に参加していたが、乗艇していたシングルスカル艇(長さ7.5メートル、幅0.4メートル)が転覆し、水中に転落、同日午後5時45分頃同所付近において溺死した。

A君は、水泳能力に乏しく、顧問教師に聞かれて、犬かき程度であり、艇につかまることくらいはできる旨返答する程度であったが、顧問教師の薦めによりナックルフォア種目からシングルスカル艇に転向した。試合経験も何回か積み、ほぼ毎日夕方6時ないし7時頃まで漕艇の練習に臨んでいたが、練習中に一度艇から水中に落ちて先輩に救助されたことがあった。当日は、第45回国民体育大会夏期大会漕艇競技青森県選考会のシングルスカル種目に出場するための練習を重ねていたのである。

同所は、前々日来の雨が降り続いたこともあり、土色に濁った泥水で、平穏な日の同じ時間帯と比較して30センチメートル程度水位が高くなっていた。A君は、午後4時30分ころ乗艇した。シングルスカル艇の進行方向に向かって右側のクラッチピンは絞めていたが、左側を絞めていたかどうかは確認していない。川岸から40メートル付近で方向を変えようとしたとき、艇の進行方向に向かって左側のオールがクラッチからはずれ、艇は同左側に転覆し、水中に投げ出された。男子ボート部員4名が川に飛び込み救助に向かった。顧問X1教諭は生徒の叫び声で女子部員3名とナックル艇で救助に向かった。顧問X2教諭は艇庫の公衆電話を通じ消防署に救助を要請し学校にも連絡した。しかしA君は沈んでしまい救助できなかった。川の中は汚濁で視界がきかず、消防署のダイバー、自衛隊水中処分隊のダイバーにより、同日午後8時5分水中に沈んでいるA君を発見、病院に運ばれたが死亡していた。


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