剣道部員の遊びによる受傷事故と校長・顧問教諭の責任1/3
「市立中学校剣道部ホッケー遊び受傷事故」
(神戸地裁、平成9年8月4日判決 損害賠償請求事件、判例時報1641号112頁)
東亜大学法学部教授
小笠原 正
市立中学校の剣道部員が、体育祭予行練習で使用した防具の後片付けをしていた際、他部員がホッケー遊びにより振り回した竹刀が当たって受傷した事故で、学校長及び顧問教諭に過失がないとされた事例である。部活動と密着した生活関係において発生した事故の責任関係を検討する。
1.事故はどのようにして起こったか
Y中学の体育祭の予行練習が行われた際、剣道部員は垂れ及び胴等の防具を着用して行進練習を行った。この予行練習終了後、使用した防具等を格技室の防具棚に片づけた後、素振り等の練習をするため竹刀を持って中庭に集合するように指示されていた。男子部員A君とB君が、竹刀の剣先を床上においた鍔の中央の穴に入れて竹刀を前方に向かって強く振り、鍔を床上を滑らせて打ち合うホッケー遊びを始めた。Xさん(女子)は防具等を片づけるため、格技室で他の部員10人ぐらいと防具棚で、防具の整理をしていたところ、ホッケー遊びをしていたA君が鍔を打とうとして竹刀を
強く振ったところ、竹刀がすっぽり抜ける形で飛び出し、先端部分が約15メートル離れた場所にいたXさんの左目を直撃し、その為に失明したというものである。
2.顧問教諭の指導はどのようなものであったか
顧問教諭は剣道初段を有していた。顧問教諭は放課後の練習に立ち会い指導していたが、練習の開始から終了まで立ち会うことは少なかった。職員会議などで立ち会わない日もあった。この日も事故の場にいなかった。部員に対し、竹刀の握り方や面の打ち方、防具の使い方及び剣道をする上での礼儀などについて一通りの指導をしていたが、部員が竹刀を練習以外に使用しないよう、常時監視するようなことはなかった。
防具等は、施錠されていない防具棚に保管され、部員の自主的な整頓にゆだねられていた。ホッケー遊び等の遊びについては、何度か注意したことがあったが、顧問教諭が注意すると指示に従い直ちにやめた。
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