県立高校相撲部の合宿練習中の熱中症死亡事故と顧問教師の過失
「県立高校相撲部練習死亡事故」3/3
(東京高裁、平成6年10年26日判決 損害賠償請求事件、判例時報1555号56頁)
日本体育大学教授
緒方 章宏
5.本判決の解説と問題点の整理
学校における部活動は、教育の一環として行われるものであるから、活動中に事故はあってはならないことであり、それが死亡事故であればなおさらのことである。元来、スポーツには事故がつきものだと言われるが、それゆえに部活動での指導にあたる顧問教諭は、普段から部員達の健康状態には注意を払うべきである。また、少しでも異常が発見された場合には応急処置を取るなり、病院に搬送するなりの処置を取るべきである。本事件では、この点において顧問教諭の取った処置には誤りがあったと言わざるを得ない。判決が認めるように、道場内でA君に異常な行動が見られた段階で事の重大さに気がつき、速やかな処置を取っていれば不幸な結果を招かなかったといえるからである。相撲での熱中症の事例は本事件が始めての例であるが、他のスポーツ、例えば柔道(本誌、98年8月号23頁参照)、マラソン、野球などでは比較的多く見受けられる事故である。その意味では、スポーツの指導に当る顧問教諭には熱中症についての正確な知識が必要に思われる。そのためには、研修等で熱中症について認識を持ってもらうような機会を作るべきであろう。また、部活動の指導は、顧問教諭の熱意によって成り立っていると言っても過言ではない。したがって、顧問教諭の責任を厳しく問うことによって、結果的に顧問教諭の指導を萎縮させてしまい、活動を沈滞化させてはならないとも言える。顧問教諭としての生徒に対する注意義務の重要性と活発な部活動との調和を図ることを考える必要がある。
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