県立高校相撲部練習死亡事故1/3

第00053号
2003年7月9日 更新

県立高校相撲部の合宿練習中の熱中症死亡事故と顧問教師の過失
「県立高校相撲部練習死亡事故」1/3

(東京高裁、平成6年10年26日判決 損害賠償請求事件、判例時報1555号56頁)

日本体育大学教授

緒方 章宏

高校相撲部の他校との合同合宿訓練に参加した1年生の部員が、練習中に熱中症にかかり、心不全により死亡した事故について、顧問教諭の指導上の注意義務違反による過失を認め、損害賠償を命じた事例である。この事件では、生徒の死亡原因が熱中症であることが認められた事例。熱中症については、最近、学校での体育の授業や部活動をめぐる事故の原因として指摘されることが多く見受けられるが、スポーツの指導に当たる教員に熱中症についての正確な知識があるとは言えないようである。そのために、本件のような不幸な結果が引き起こされてしまったと言ってよいであろう。

ここでは、熱中症の問題を中心に教師の注意義務について考えてみよう。

1.事故はどのようにして起こったか

この事故は、Y県立高校1年生の相撲部員が、昭和61年8月7日から始まった他校との合同合宿訓練に参加し、同日午後1時頃より相撲部の顧問教諭の指導を受けて、四股踏み、摺足、勝ち抜き戦、10番勝負、ぶつかり稽古等をした後、整理運動としての四股踏み、腰割を始めた頃から指導の教師に唾を吐きつけたり、ふらふらしたりするなど異常な行動が目立ち始め、やがて転倒、嘔吐、脱糞などの症状を示すに至った。そこで顧問教諭は、救急車の出動を要請し、午後4時40分頃到着した救急車でG病院へ搬送し、午後5時11分に病院に到着後意識喪失と脱水症の診断を受け治療に入ったが、翌日8日午前4時2分に熱中症による急性心不全により死亡した。そこで両親は、相撲部の顧問教諭に指導監督上の注意義務違反による過失があったとして、国家賠償法第1条1項にもとづき学校の設置主体たるY県を相手に損害賠償を請求したのである。

2.熱中症とは

先に述べた通り、最近、学校での体育の授業や部活動をめぐる事故の原因として熱中症が上げられることが多い。しかし、世間に広まっている割には、熱中症についての知識が正確に認識されているとは言い難いのが現状である。

熱中症は、高温多湿な環境下において体内の体温の発散機能が奪われ、そのため体温が異常に高くなり、脱水症状や血液循環不全を引き起こし、心機能の低下、脳の酸素不足による脳症の発症、中枢神経障害、臓器機能障害を来すもので、主な症状は、瀕脈、皮膚の紅潮、発汗の停止、頭痛、めまい、嘔吐に始まり、運動障害、痙攣を起こし、適切な処置を取らなければ昏睡状態を招き、やがて急性心不全により死に至る極めて危険な病気である。応急処置としては、何よりも体温を正常な位置まで下げることであり、そのため涼しい所に寝かせ、衣服を脱がせて水を掛けたり氷で冷やしたりすることが必要である。また脱水症を防ぐため水分や塩分を補給することも必要である。さらに意識の有無を確認し、意識がない場合には、速やかに医師の診断と治療を仰ぐべきである。

次回へ続く


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