体育授業中暴行死亡事故3/3

第00052号
2003年6月30日 更新

体育授業中の暴行による死亡事故の担当教諭の責任3/3
「体育授業中暴行死亡事故」

(福島地裁郡山支部、平成9年4月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1642号120頁)

東亜大学法学部教授 

小笠原  正

 

3.本判決の解説と問題点の整理

成長発達過程にある児童生徒は、心身ともに未熟であり集団生活を行う学校教育は、生命進退にたいする危険を前提として教育活動が実施されなければならない。中学校における学校の設置者・管理者、日常の教育活動を現場で日々実行する教師は、生徒の生命身体を危険から保護するために、生徒の状況をよく観察し、把握し、事故が発生しないように注意し、危険を未然に防止し、もし事故が発生した場合には最善の方策をとる等、適切な措置を取るべき法的義務(安全配慮義務)を負うものである。
体育の授業中に死亡事故が発生するとは、子供を学校に通わせている父母・保護者は夢にも思ってはいなかったであろう。そこに学校に対する信頼関係が存在していたはずである。しかし、現実にこのような死亡事故が発生してみると、学校はどうなっているのか、日本の教育はこれでいいのかと不安にならざるを得ない。
現代の社会状況は教育に対して大変に厳しいものがある。登校拒否、校内暴力、家庭内暴力、無秩序な授業現場、そして「いじめ」。このような教育状況を社会的病理現象であると教育学者は言っているが、学校での教育活動が一部成立できない現状は看過できないことである。

1)正課授業中の安全配慮義務
学校での授業の実施における教師の注意義務は、次のように整理することができる(伊藤進小田博子『解説学校事故』参照)。

@事前注意義務授業計画策定による安全確保、教場の条件整備、生徒の身体的状況並びに能力等の把握、事前の説明等。
A指導監督上の注意義務授業の実施に際しての説明・注意義務、立ち会い・監督義務、個別指導義務等。
B事後措置義務事故発生の応急措置、傷害が重篤な場合の専門医の診断を仰ぐ義務、保護者への状況通知義務等。

本件については、Aの指導監督上の注意義務が問題になっている。裁判所も指摘しているように、授業の場における学習のための秩序を維持するために、担当教諭が積極的に生徒の動静を把握し、危険を予見し、それに対応するという教員の基本的な姿勢・能力に問題があったように思える。

2)正課授業中のいじめと安全配慮義務
生徒間の傷害事故については、いたずら型、ふざけ遊び型、けんか型、リンチ型などに分類されている(遠藤博也『国家賠償法』(上))が、これに本件のようないじめ型を加えなければならないであろう。裁判所も判示しているように、教師には、事前に生徒の健康状態・体調、運動能力、発達程度等の把握。それらに応じた授業計画の策定・実施。正課授業中は、秩序・規律の維持、生徒の動静の把握、危険の予見と十分な注意、暴行発生・体調不良等の場合の事態の把握と、暴行の制止並びに秩序の回復のための適切な措置等など、高度な注意義務(安全配慮義務)を負っているのである。


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