体育授業中暴行死亡事故1/3

第00050号
2003年6月12日 更新

体育授業中の暴行による死亡事故の担当教諭の責任1/3
「体育授業中暴行死亡事故」

(福島地裁郡山支部、平成9年4月24日判決 損害賠償請求事件、判例時報1642号120頁)

東亜大学法学部教授 

小笠原  正

 
市立中学の生徒が体育の授業中、「失神遊び」で同級生に首を絞められ、倒れたところを、数名のものが胸や腹の上に馬乗りになり、瞼を触ったり、口をふさぐ、摘む、頬をたたく、砂をかける、足を引っ張るなどの暴行を加え死亡させたものである。この件につき、体育担当教諭の過失があるとされた。

1.事故はどのようにして起こったか

市立中学校に入学間もない4月、A君は(当時12才)体育担当教諭(以下教諭と言う)の指導のもと100メートル走行のタイム測定を目的とした体育授業を受けていた。
自分の100メートル走行を終了し、教諭に告げられた自己の記録を自ら記録用紙に記載した。当時100メートル走を終えた生徒らの多くは、教諭の指示した地点と無関係に雑然と散在し、私語を交わし騒がしい状態であった。同級生の一名がA君の首を後方から右腕を回して絞めた。その為A君は失神し、後ろにのけぞるようにして倒れた。
ところが、A君がグランドに仰向けに倒れたのを見た周辺の生徒達のうち数名は、倒れたA君を取り囲み、胸や腹の上に馬乗りになって体重をかけ、瞼を触ったり、鼻や口を塞ぐ、つまむ、頬を叩く、砂をかける、足を引っ張るなどの行為をした。その間A君は失禁している。

教諭は、計測を終えた生徒らがあらかじめ指示した場所に整列せず、ゴール付近に雑然と散在して、たむろし、騒がしい状態にあったことを認識し、「うるさい静かにしろ。」等と口頭で注意したものの、整列させて待機させることなく計測を続けた。
このような状態のもとで、首絞め等の行為が行われたものであるが、教諭は、A君が同級生から暴行を受けていることを全く認知せず、事態の重大性を認識しないまま、A君の走行後8組となる最終組の生徒の走行途中まで計測を続行した。
教諭は、A君が倒れて5分間を経過した頃、生徒から急を告げる報告を受けて初めて倒れた地点に行き、A君がグランドに仰向けに倒れて失神し、心臓及び呼吸停止し、瞳孔散大していることを認め、人工呼吸を施し、駆けつけた他の教諭によって心臓マッサージを行ったが、蘇生するに至らなかった。その後救急車で総合病院に搬入されたが、脳死状態となり死亡したものである。A君の死因を内因死(病死)とすることはできない。

次回に続く


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