「小学校日時計転倒死亡事件」2/3
(東京地裁、平成9年11月21日判決(控訴中) 損害賠償請求事件、判時1640号143頁)
弁護士 菅原 哲朗
2.裁判所はこの事故をどのように判断したか
(1)「本来の用法」について
日時計は卒業生の記念品として設置、管理されていたものであり、この上に乗るあるいは覆いかぶさるということが本来の用法でないことは明らかである。
(2)小学校低学年児童の行動と教師の予見可能性
Y市立小学校の児童らが、本件日時計を教材として興味をもって使用し触れるのみならず、これを遊具として好奇心をもって接したり、気楽に戯れたりし、場合によってはこれによじ登る可能性があることも容易に予測できる。
(3)「公の営造物」たる日時計の安全性
本件日時計は、児童らが寄りかかる、あるいはそれによじ登るなどの行動にでたとしても容易に転倒しない程度の安全性を有していない以上、通常有すべき安全性を備えていなかった、というべきである。
(4)結論として、判決はA君の過失相殺3割を認定のうえ、原告(保険給付を支出した健康保健組合)の損害賠償請求のうち治療費など508万円余の一部認容をした。
スポーツ法律用語解説
『過失相殺(かしつそうさい)』
民事責任を問う損害賠償事件においては、民法722条2項により被害者に過失があるとき「過失相殺」として賠償金額を算定するさいに、裁判官の判断で「被害者の責任負担分」を認めて減額し、調整をはかることが出来る。
「被害者の過失」とは被害者側を意味し、父母の過失によって賠償額を一部控除された判例も存する。最高裁判決は昭和39年6月24日、「被害者に責任能力がなくても、事理を弁識できる知能が備わっていれば過失相殺出来る」と認め、この考えが法律的に通説になっている。
言い換えると、過失事件は、「つい、うっかり」という注意義務違反の責任が問われるので、一方当事者の違法と言える故意事件と異なる。つまり、当事者双方の注意義務違反や種々の自然・人的要因(天災・人災)が絡み合って身体傷害・死亡という重大な結果が発生する場合が多いことから、一方のみの責任と判断出来ず、損害の公平な負担を図ろうとする観点から損害賠償の金額を減額する法律制度である。 |