高校でのラグビー授業中の
事故と教師の責任
「モールでの頸椎捻挫事故」3/3
(福岡高裁、平成9年7月15日判決 損害賠償請求事件、判時1628号39頁)
弁護士
望月 浩一郎
3.本判決の解説と問題の整理
ラグビーに関しては、判例集に掲載された事故だけでも11件あり、1件が中学校、10件が高校での事故である。8件がクラブ活動中に、3件が授業中に生じている。2件が熱中症、9件が何らかの接触による事故であり、態様は、モールが2件、タックルが2件、スクラムが3件、その他2件となっている。事故に結びつく要因としては、技量体格の差(高校生と社会人との試合における事故)や技量の未熟(授業における未経験者の事故)などが指摘できる。
ラグビーは、重大な事故を生じる恐れのあるスポーツであり、授業としてラグビーを行う場合には、指導担当教諭は、@危険があること、かつ、その危険の内容と回避方法を教え、生徒自らが危険を回避できるようにし、A生徒が知識として理解するにとどまらず、実際に危険が回避できるように、段階的な指導を行い、B危険が現実化する恐れが生じた場合には、直ちにこれを回避するために、監視を行い、必要な指導を行う、義務がある。本件においては、一審、控訴審共にこれら3点の義務違反の有無を判断しており、共に@、Aの義務違反は否定した。
一審と控訴審とで判断が分かれたのはBの義務を怠ったか否かの点である。得点を争う練習方法であったか否か、どちらのグループがボールをとるか決めていなかったことによる危険の程度などの事実認定の差から結論が異なっているが、義務の内容自体は同一の判断をしている。
本件は、限られた教育条件下の中で、指導教諭として努力していると判断できる事案ではあるが、ラグビーの経験のない生徒を対象に、わずか2時限で、パス、スクラム、モールについて段階的指導を尽くすというのは至難の業であり、この程度の段階的指導では、モールが崩れて危険な状態になることを有効に防止できるのか(現実に、一つの班ではモールが崩れそうになりA教諭が個別の指導を行っている)について慎重な検討が必要である。
|