高校でのラグビー授業中の
事故と教師の責任
「モールでの頸椎捻挫事故」2/3
(福岡高裁、平成9年7月15日判決 損害賠償請求事件、判時1628号39頁)
弁護士
望月 浩一郎
2.裁判所はどのように判断したのか
一審判決(佐賀地裁、平成8年3月29日判決、判時1628号43頁)は、B生徒の請求を認め、損害に対する心因的要素、原告の過失などを考慮し、県に対し、B生徒の損害のうち4割の支払いを命じたが、本件判決(控訴審判決)は、A教諭の過失を否定し、
請求を全部棄却した。
本件判決の責任に関する判断は以下のとおりである。
「ラグビー競技は一連の攻撃、防御の動作で参加者が互いに相手と激しく接触したり衝突することがあり、それに付随して諸種の身体事故が発生することが予見され、本質的に一定の危険を内包しているものである。この内在的な危険性は、ラグビー競技の一部であるモールの練習においても、人と人との接触するゲームである以上、避けることができないものである。したがって、これを学校教育の授業として行う場合、体育担当の教諭としては、
@右の危険を生徒に理解させるため事前に基本的な注意事項を十分に説明し、また、
A身体的事故を発生させないように、生徒に基礎的技能から段階的に高度な技能の習得へと練習させ、さらに、
B練習にあたっては指導・監視ができる状況の下に自らを置き、生徒に身体的事故が起こらないように十分に監督する義務を負担しているものというべきである。」と指導教諭の義務を確定した上で、
「A教諭は、実技に先立って、生徒に理解できる程度に、一般的な危険性や乱暴なプレーをしないよう注意し、以下順次準備運動から個人的技能、集団的技能へと説明し、練習をさせつつ、段階を踏んで指導を進めており、その間自らも実技を行って手本を示し、また生徒にもやらせてみながら授業を進行させていたものである」として「A教諭に右@及びAにつき注意義務違反の点は認められない」と判示した。
また、「当時、A教諭において直ちにモールの練習を中止しなければならない注意義務を基礎づける危険な状態があったことは認められず、さらにその点や右モールの練習の目的や危険度等を考慮すると、右監視のやり方ないし程度が妥当を欠く不十分な措置であるとは言い難い」として「A教諭に前記Bの注意義務違反の点も認められない」と判示した。
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