高校でのラグビー授業中の
事故と教師の責任
「モールでの頸椎捻挫事故」1/3
(福岡高裁、平成9年7月15日判決 損害賠償請求事件、判時1628号39頁)
弁護士
望月 浩一郎
県立高校において正課の授業としてラグビーのモールを練習中、ボールを持った生徒の上に多数の生徒が覆い被さったため頸椎捻挫の傷害を負う事故が発生した。
一審判決は、この事故は防ぐことができたとして、指導にあたっていた教師の過失を肯定して県に損害賠償を命じたが、本件判決は、教師の過失を否定して、一審判決を破棄した。
1.事件はどのようにして起こったのか
県立高校2年5組と6組の男子生徒合計49名が、体育の正課の授業としてラグビーの練習を行った初日に事故は起こった。A教諭は、3時限に準備体操後パス練習を行い、4時限には、スクラムの練習の後、モールの練習を行った。モールとは、ボールを持って前進する際、相手方選手がボールを奪いに来て接触する状態に至ったら、これを奪われないように反転した上、相手方から押されないように、味方選手に両側から支えてもらいながら、味方選手にボールを渡す技能である。
モール練習は以下の順序で行われた。
@モールの説明。
A乱暴なプレーに及ぶなどしてモールをつぶすことがないようにとの注意。
B生徒各2人組でモールの型を3回ほど練習。
C敵味方各3人でモールの型を形成させて見本を示しながら組み方の説明。
D最後に、5、6人を一つのグループとしてのモール練習。
この最後の段階での練習で事故が起こった。
5、6人を一つのグループとする練習は次のように行われた。A教諭は、5組の生徒16名を1つの班に、6組の生徒33名を3つの班に分けて、各班毎に体育館の4隅で練習を行わせた。A教諭は各班の半数ずつ(但し、5組は、5〜6人ずつ3つのグループ)が敵、味方に分かれてグループを形成し、各グループ同士が間隔をあけてほぼ平行に1列に並び、列と列の中間にボールを置き、このボールを先取したグループはモールを形成して、味方同士でボールを手渡しつつ最後尾まで繋ぎ、敵方は、ボールを先取したグループに押し戻されないよう踏ん張ってこれを阻止するというものであった。
ボールをどちらのグループが先に取るかは、各班の生徒の話し合いに任せていた。B生徒らの班では、取る順番は決めていなかった。
4つの班がモールの練習を開始したころ、A教諭は、各班を見回ったりして各班の全体に注意を向けて監督していたが、1つの班(B生徒らの班でない)のモールが押し合いながら移動して崩れそうになったのを見てその班のところに駆けつけ、再度モールの作り方を指導し、その後は、その班付近で同班の指導に注意を注いでいた。
B生徒らの班でも、ボールをはさんで2つのグループが向かい合い、合図を受けて双方から1人ずつがボールを取りに行き、ボールを取った者が反転して、背後からカバーして来た相手方を後ろ向きに押すとともに、双方のグループのメンバーが、ボールを持った者を中心に組み合って押し合って、モールの練習をしていた。B生徒がボールを取った際、相手方の生徒が多数覆い被さったため頸椎捻挫の傷害を負った。
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