大学におけるスポーツ事故と指導者責任
「大学合気道部死亡事故事件」1/3
(松山地裁、平成8年8月28日判決 損害賠償請求事件、判夕968号168頁)
東亜大学法学部教授
小笠原 正
国立大学合気道部の組み手練習中に、技を掛けられて頭部を打撲し、急性硬膜下血腫の障害を負って死亡した事故について、同部の主将、顧問教官及び大学当局(国)の責任が問題になった事件である。裁判所は責任を否定したが、大学運動部の主将や顧問教官の責任の限度について検討する必要がある。
1.事故はどのようにして起こったのか
国立大学一年生のA君(4級)は、所属する大学合気道部の春合宿において、組み手練習中に合気道2段のB君から入り身投げをかけられ頭部を打撲した。その為、意識朦朧となり救急車で病院に搬入されたが、急性硬膜下血腫と診断され治療が行われた。しかし、意識が回復せず死亡したものである。
事故の当日は春合宿二日目(3月10日)に当たり、午前6時20分から朝練習が始まり、準備練習の後、武器(杖)を使用する練習を行った。昼食後、A君など一回生は体育館に練習の為の準備をし、10時30分から練習を開始した。日ごろの練習内容と同じく、準備練習、受け身の練習等が行われた後に、二人一組となり、入り身転換、両手持ち呼吸法、座技第一級及び第二級、四方投げ、正面打ち入り身投げの順に、主将及び副将による演武を挟んで順次練習が行われた。A君はB君と組み手練習をするのは初めてであった。A君が四方投げの最中に息が上がっていたため、B君は衣服を整えさせるなどして休息を取らせ再度練習を続けた。しかし、11時30分ころB君の投げが約10回目となったとき、A君は意識が朦朧となり、立ち上がろうとしても立ち上がることができない状態であった。部員らがA君を体育館の板の間に移動させて約5分間様子を見たが意識がなく、いびきをかき始め、頬をたたき呼びかけても応答しない状態となったので救急車で県立中央病院に搬入した。
緊急手術の結果、右側頭部に急性硬膜下血腫が認められたので、除去するなどの処置が取られ集中治療室で治療を受けたが、3月16日に肺炎、18日に他臓器不全を起こし、A君は意識を回復しないまま19日午後死亡した。
<次回に続く>
次回は大学の責任について
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