小学生プール逆飛び込み頸髄損傷事故1

第00030号
2002年10月10日 更新

小学生逆飛び込み傷害事故と
担当教諭の安全配慮義務

「小学生プール逆飛び込み頸髄損傷事故」1

(広島地裁、平成9年3月31日判決 損害賠償請求事件、判例時報1632号100頁)

実践女子短期大学 

教授 日野 一男

市立小学校6年男児が市主催の水泳記録会代表に選抜され、教師の指導下での練習終了後、教師の指示でコースロープを格納する作業をしていた際、飛び込み台から逆飛び込みを行い失敗し頸髄損傷を負った。
判決は、教諭の行った逆飛び込み指導が不適切とし過失を認める一方、原告にも5割の過失相殺を認定した。

1.事故はどのようにして起こったか

Xは市主催の水泳記録会の出場予定者に選抜され、他の児童とともに放課後指導を受けていた。午後3時20分ごろから、練習内容最後の自由水泳が始まり約2分ぐらいした後、指導教諭が全児童に対し、自由練習を終えるのでコースロープを引き上げ、倉庫への格納作業を行うよう指示をした。本作業は指導教諭らと全児童がコースロープを外した後、南側プールサイドにコースロープを引き上げ、南西側倉庫へ格納するというもので、Xら5名は北側でフックをはずす作業に従事していた。以前から、当番に当たっていても各自の仕事を終えた児童らは、作業中にも逆飛び込みを含め水泳の練習をしていたことがあったことから、自分達の作業を終えたXらが北側で逆飛び込みの練習を始めたところ、逆飛び込みを失敗しXが頸髄損傷を負った。

2.当事者はどのようにし主張したか

<原告Xの主張>
(1)プールの水深について
飛び込み台直下は満水時で南側80センチメートル、北側90センチメートルであるが、本件練習後はプール側溝から水があふれ、少なくとも4,5センチメートル減じており、体位向上がめざましく、大人並みの体格を有している小学6年生においては危険なプールであった。

(2)作業中の逆飛び込み練習について
練習終了後は全員集合し、整理体操を行い水泳技術の指導、次回練習の予定を告知した上、解散の指示をするのが通常であるが、これらがされない作業中は、自分の作業が終わるか、当番に当たっていない児童は、その間も自由水泳をしており、指導教諭から泳ぐのをやめるような注意はなかった。

(3)ゴムホース使用の本件逆飛び込み指導について
飛び込みから入水までの距離を遠くへ伸ばすため、飛び込み台前方120センチメートル、水面から80センチメートルの高さに、プールサイドの手すりを利用し、ゴムホースを張りこれを飛び越す練習方法は、鍛練された競泳選手が使用するパイクスタートの指導であるが、パイクスタートは入水角が深く水底に頭部を衝突させる危険が高い飛び込み方法であり、児童はゴムホースを越えるため、より強く高く上がる踏切を練習させられた結果、適切な姿勢を保持することが困難となり危険な指導である。

<被告Yの主張>
(1)について
本件プールは、諸文献に説明されているプールと比較しても、構造上特に差のないきわめて標準的なプールであり、事故当日は給水を行いながら水泳練習が実施され、事故発生時も満水状態であった。

(2)について
教師の指導のないまま逆飛び込みをすることは禁止しており、本件発生までの間、飛び込みを行う児童は1人もいなかった。原告は普段から聞き分けの良い子であり、指示を守っていた。ところが、原告は最初本作業に従事していたが、他の4名の児童と遊び始めたため、作業を手伝うよう再三注意したが、これを聞き入れなかった結果の事故で、指導教諭らが本件事故を予見することはできなかった。

(3)について
本件飛び込み指導は、具体的な文献の記載に依拠し実施されたものではないが、逆飛び込みにおいて、入水地点がプールサイドに近すぎると、水中深くまで進入する危険があるため、遠くへ飛ばせることを目的に、本校創立(昭和55年)後2,3年のうちにこれを取り入れたものであり、児童の能力に応じた段階的なものである。原告もこの方法での練習を相当数行っており、本件練習に参加した児童は、上手に逆飛び込みをしていた。
ゴムホースは飛び込み台前方110センチメートルに張り、両サイドは水面より50〜60センチメートル、中央(5コースあたり)は30センチメートルの高さであった。


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