「プール逆飛び込み損傷事故」(1)

第00016号
2002年8月19日 更新

「プール逆飛び込み損傷事故」(1)

プール逆飛び込みでの市営体育施設の管理責任
(浦和地裁、平成5年4月23日判決(控訴・和解成立)損害賠償請求事件、判例時報1485号89頁)

弁護士 菅原哲朗


市民体育館の室内プールを使用して、体育教師の立ち会いの下、水泳部のクラブ活動をしていた際、県立高校2年生の男子X君(17歳)は逆飛び込みによるスタートダッシュ練習中でプールの底に頭を打ち、頸椎損傷のケガを負った。室内プールは、スタート台直下の水深が1.0mしかなく高校生以上の者が逆飛び込みを全く制限せずに利用する公の営造物たるY1市の体育施設として安全性に瑕疵がある。また、Y2県立高校の指導教師Aも高校の屋外プールより水深が25cm浅いにもかかわらずスタート台からのスタートダッシュ練習をさせたもので、安全保護義務違反がある。
判決はX君の過失相殺2割を認定のうえ、原告の2億円の損害賠償請求のうち逸失利益・介護費・慰謝料など1億379万円余の一部認容をした。

1.事故はどのようにして起こったか(事実の概要)

(1)事件はどのようにして起こったか?
水泳のシーズンオフは屋外プールしかないY2県立高校の水泳部は、Y1市営の体育施設である室内プールを借りてクラブ活動を行ってきた。昭和60年12月20日、水泳部はクラブ顧問であるA教師立ち会いのもと午後2時頃から練習を開始し、ウォーミングアップからバタフライまで5,400m程泳いだ後、スタート台から逆飛び込みのスタートダッシュ練習を始めた。
X君は4番目のスタートで、水深が浅かったため恐怖心から力を抑えて飛び込み、その結果腰が完全に伸びきらず、普段よりも急角度で入水することになり、プールの底に頭部を打ち、第五頸椎脱臼、第六頸椎骨折による頸髄損傷の傷害を負い、常時他人の介護を要する下肢不自由の労働能力100%喪失の後遺症を負った。

(2)「公の営造物」たる市営の体育施設たる屋内プールの構造と管理方法はどうだったのか?
Y1市営のプールは、子供から大人までを対象として、市民の水泳スポーツの振興のために昭和47年に建設された屋内の温水プールであって、その構造は縦の長さは25mで5コースを有し、各コースには高さが47cm、幅40cmを有するコンクリート製のスタート台が設置されており、その水深は、満水時において最深部で1.2m、スタート台直下が最も浅く1.0mである。
Y1市の教育委員会の体育課で管理しており、市営プールが一般開放されているときは、市体育課の方でプールサイド部分に監視員を置いて監視しているが、団体使用の場合は団体の責任者に一切の監視を依頼し、同市職員は特に監視していない。
本件プールの四隅及び左右プールサイドの中央部にはそれぞれ水深が表示されている。また、プールの出入口付近に「危険な飛び込みは禁止します」等の注意事項が掲示されているが、そこにいう危険な飛び込みとは指定された場所以外の飛び込みや、助走をつけての飛び込みのことであり、スタート台からの通常の逆飛び込みの禁止ないし制限についての記載はない。

(3)Y2県立学校側のスタートダッシュ練習への指導注意は十分だったか?
原告の主張は「本件事故発生の前、Y2県内の体育の教師を対象とした水泳講習会が毎年6月に開催されており、そこで、逆飛び込みについては頸椎損傷等の危険性があるから、水深等も考えながら正しいスタートの指導を徹底して行うということが話題になったことがあり、その他新聞等によっても、スタートダッシュ練習に当たってはプールの底に頭部等を打ち、頸椎損傷等の重大な危険性があるとの指摘もあって、逆飛び込みの危険性は、高校の体育、特に水泳指導関係者には本件事故当時既に認識されていた」と学校側の水泳部員に対する安全配慮に欠けた注意義務違反を指摘する。

<次回に続く>
次回は裁判所の判断と問題整理


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