課外クラブ活動顧問教諭の法的責任(2)

第00011号
2002年7月30日 更新

課外クラブ活動顧問教諭の法的責任
「市立中学校柔道部練習負傷事件」(2)

(最高裁、平成9.9.4 第一小法廷判決 損害賠償請求事件、判時1619 号60 頁)

小笠原 正

日本スポーツ法学会会長
東亜大学通信制大学院教授

 

<前回からの続き>

5 .それでは、最高裁はどのように判断したのか

 最高裁は、格闘技である柔道には、本来的に一定の危険が内在しているから、学校教育としての柔道の指導、特に、心身ともに未発達な中学校の生徒に対する柔道の指導にあっては、その指導に当たるものは、柔道の試合又は練習によって生ずる恐れのある危険から生徒を保護するために、常に安全面に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負うものであるとした。
 また、このことは、H 市立中学校柔道部における活動のように、教育課程に位置付けられてはいないが、学校の教育活動の一環として行われる課外のクラブ活動(いわゆる部活動)についても、異なるところはないと判断した。
 以上を前提に、C 教諭に安全配慮義務違反の過失があったか否かについては、原審の判断を是認することが出来ないとして、次のようにその理由を述べている。
 すなわち、A 君は、回し乱取り練習に通常必要とされる受け身を習得していた。又、既に回し乱取り練習においてB 君の練習相手をして、特に危険が生じていなかった等の事実を考慮すると、両者に技能格差が存在するとしても、指導に当たったC 教諭の判断に安全面への配慮に欠けるところがあったということは出来ない。そのほか、事故当時、A 君が特に疲労していたなど事故の発生を予見させる特別の事情もうかがうことが出来ない。
 したがって、事故の発生する危険性が具体的に予見することが出来る特段の事情がないことから、注意義務違反があったとはいえず、本件事故は、柔道の練習における一連の攻撃・防御の課程で起きた偶発的な事故であって、事故の結果は誠に深刻であるが、これをC 教諭の指導上の責任に帰することは出来ないと自ら判決を下し、原判決を破棄、控訴を棄却した。

6 .本判決の解説と問題点の整理

1 )学校スポーツの指導者の注意義務
 学校スポーツの指導者(教師)は、学校における教育活動によって生ずる恐れのある危険から、児童生徒の生命・身体を保護し、安全を保持する義務を負っている。
 この義務を指導者の不注意(過失−具体的安全配慮義務=予見可能性に基づく結果回避義務の違反)によって尽くすことが出来なかったとすれば、スポーツ事故に対する損害賠償等の法的責任が問われることになる。
 本判決も、「試合又は練習によって生ずる恐れのある危険から生徒を保護し、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負うものである。」と判示しているところである。これは、既に最高裁昭62.2.6 二小法廷判決、最高裁昭62.2.13二小法廷判決、最高裁平2.3.23 二小法廷判決等の、学校教師の注意義務に関する判示と同じものであり、確立した判例ということが出来る。

2 )クラブ活動と部活動との違い
 「クラブ活動」は、学習指導上の学校教育活動における正規の教育活動であり、必修とされている。「部活動」は、教育課程外の任意の活動(課外活動)とされている。「クラブ活動」と「部活動」とは、学校教育活動において異なった位置づけと性格をもつものである。課外活動としての部活動における注意義務の内容として、最高裁昭58.2.18 二小法廷判決は、「課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われたものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に、生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することは出来ない。」と判示しており、本判決も同じ判断に立っている。さらに、平成元年の学習指導要領の改訂により、部活動への参加をもってクラブ活動の一部又は全部の履修に代えることが出来ることになったことから、部活動が教育課程内の活動としての性格を帯びるものとなり、正規の教育活動の一環として、課外のクラブ活動としての「部活動」を位置づけることが相当である。本判決を含む判例もそのように解している。


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