ウインター特集
「スキー・スノーボード 楽しく安全に」8
福井大学教育地域科学部助教授
全国スキー安全対策協議会調査委員会委員
日本スポーツ法学会会員水沢 利栄
スキー・ビンディング
骨の強弱に合う調整を
スキーのビンディングには、スキー板とスキー靴とをしっかり固定する機能がある。また瞬間的にスキー靴をスキー板から解き放つ機能も併せ持っている。転倒などで脚がひねられて骨折や靱帯(じんたい)損傷の恐れのある負荷が加わったときには、解放されることによってケガを防ぐという機能だ。
構造はつま先側のトウピースと踵(かかと)側のヒールピースがバネの力で互いにスキー靴を押さえ合っている。滑走中は外れず、無理な力が加わったときにだけ解放するように設定するかは、バネの強さ、靴の押さえ方の加減など微妙な調整が重要となる。要はケガをする寸前に解放されるように設定しておくこと。骨の頑丈な人にはバネの強さを強く、骨の弱い人には解放目盛りの値を弱く設定しなければ意味がない。
現在ビンディングの解放値はISO(国際標準化機構)の基準として、スキーヤーの@体重A身長B技能Cスキー靴のソール(底)の長さD年齢の各データから換算表をもとに算出される。解放値は0.75から10.0の間で設定される。解放値の値が大きいほど解放されにくい。
当然各メーカーともISOの基準に対応している。スキーの販売店やレンタル店では、スキーヤーの安全のために個々の客に適した解放値に調整して販売または貸し出しをしなければならない。この点について欧米では徹底して行われているが、日本では個人に任されあいまいに行われていた状況があった。
1995年PL(製造物責任)法の施行により、資格のある店員によってのみ取り付け、調整が行われるようになった。不適切に調整されたビンディングによってケガをした場合には、販売店やレンタル店の責任が問われることになる。そのため販売店などでは、販売時点での調整が正しく行われたことを示す証拠を残すワークショップチケットと呼ばれる作業確認書が用いられている。これらによってケガを防ぐ安全性は高まった訳だ。
しかし、ビンディングはいつでもうまく外れてくれるとは限らない。トウピースは主に左右の水平方向、ヒールピースは上下の垂直方向への無理な力に対して外れるように設計されている。そのため斜めにひねられるような力に対しては外れにくい。ビンディングの機能にも限界があることを承知しておかなければならない。
スキーヤー同士の衝突事故の場合、衝突した側の不注意だけを事故の責任として判断できないこともある。負傷したスキーヤーのケガの部位や程度によっては、ビンディングが解放されたか否か、適正に調整されていたか否かも問題になってくる。
不適当に調整されたビンディングにより傷害が大きくなったと考えられる場合には、ケガをしたスキーヤー自身、あるいは調整した販売店などにも責任があると判断されることもある。
衝突相手の行為ばかりに目を向けるのではなく、自分のビンディングが正しく調整されているかどうかをチェックすることも大切だ。
〔福井新聞社提供〕 |