ウインター特集
「スキー・スノーボード 楽しく安全に」7
福井大学教育地域科学部助教授
全国スキー安全対策協議会調査委員会委員
日本スポーツ法学会会員水沢 利栄
多い逆エッジ転倒
脳内出血の危険認識を
95/96シーズン、全国で起きたスノーボーダーの死亡事故は15件。その内の10人は初心者が転倒して脳内出血を起こしたものだった。
その原因に「逆エッジ転倒」があげられ、スノーボーダーを震撼(しんかん)させた。
スノーボードは、滑走面の両端に付いているエッジで雪面をとらえながら滑走する。山側のエッジを利かせて滑っているはずが、バランスを崩して谷側のエッジが雪面に触れると、急激にブレーキがかかった状態となり、上体は谷側に投げ出されるような形で転倒する。
身構える余裕もなく突然バタッと倒れる。後方に転倒するときには腰を強打したり後頭部を雪面に直撃したりする。つま先側のエッジが引っ掛かった場合には、前方へ顔面から落ちたり両手を突いて手首を痛めたり腕を骨折したりもする。硬い雪面で後頭部を直撃する場合は、衝撃は非常に大きい。
雪面で頭を直撃しなくても、頭部が急激に振られることによって脳が損傷することもある。
脳は頭がい骨の中の髄液に浮かんでいるが、激しく揺れることで脳内の血管が切れることがある。硬膜下血腫と呼ばれる脳内出血だ。
脳の血管が切れると脳内に血液が充満し脳を圧迫することになる。転倒してから数時間から数日間で死に至ることもある。大きな衝撃の転倒ばかりが脳内出血の原因ではない。何十回も転倒を繰り返すことによって脳の血管が損傷することもある。逆エッジ転倒は急斜面よりも緩斜面で起こりやすい。谷側のエッジが雪面に触れやすいからである。それだけに緩やかな斜面で練習する初級者に集中する。スノーボーダーの技能レベルが向上してきている最近でも依然初級者に特徴的な傷害である。
1999年シーズン筆者らの研究チームが初心者のある女性を観察調査した結果、4時間で180回も転倒をした。その内の50回(28%)は逆エッジ転倒。衝撃度の大きかったものは13回だった。幸いケガはなかった。
逆エッジ転倒による硬膜下血腫による死亡事故を防ぐためには、転倒の回数を減らすことが重要だ。スキーのストックの利用も有効と考えられる。ヘルメットに関ついては頭皮を保護したりショックを吸収したりして有効だが、脳が急激に揺さぶられて起こる脳内出血については防げないとも言われている。万全なものとはなり得ないが、滑走にはぜひとも必要なものだ。
そして、転倒により頭に強い衝撃を感じたときには、脳内出血の危険な兆候に早く気付くこと。兆候に気付いたら直ちに脳神経外科の病院で診察してもらうこと。脳にたまった血液を手術で除去することにより救命される。とにかく早期段階で症状に気付き医師の診断を仰ぐことが大切だ。
脳内出血の危険な兆候は次の9つの項目などである。
@異常な眠気
A絶え間ない吐き気・むかつき
B時間・場所・名前の混乱
C激しい頭痛
D手足の異常なけいれん
E斜視・複視(物が二重に見える)
F鼻汁・耳だれ
G腕・脚部の脱力感
H首の硬直
〔福井新聞社提供〕 |