ウインター特集
「スキー・スノーボード 楽しく安全に」6
福井大学教育地域科学部助教授
全国スキー安全対策協議会調査委員会委員
日本スポーツ法学会会員水沢 利栄
股間のけが防止
ハイバック倒しリフト
あるとき、リフト乗り場で並んでいると筆者の前で二人組の女性が進みながら話していた。「ビンディングのハイバックを倒した方がいいよ。立てたままにしてるとリフトを降りるときに転んでおしりケガしちゃうんだって。テレビで言ってたよ」と一人の女性が教えていた。おそらく同じような会話が全国のスキー場で交わされていたはずである。というのもその2日前の朝、全国版のニュースでスノーボードの股(こ)間のケガのことが紹介されていたのである。
股間のケガは次のような形で起こる。スノーボーダーがリフトに乗り降りするときには、前の足はビンディングに装着し、後ろ足は装着しないで進む。現在主流のビンディングはふくらはぎの部分を支えるハイバックと呼ばれる金属製または強化プラスチック製の支えがある。リフトを降りるとき転倒して運悪くハイバックの上に勢いよくしりもちをついてしまうと、股間を打撲したり裂傷を負うことになる。
特に体の柔軟な初級者の女性に多く起きている。恥ずかしさもあり受傷後何日かして産婦人科や外科で診察してもらうことが多いという。
スノーボードの初心者を襲う特徴的な傷害である。
股間のケガを防ぐためには、リフト乗車の際にハイバックの部分を倒して乗ることが大切である。ハイバックによる股間のケガについては、これまで新聞などでも報道されたりスノーボードの教本にも掲載されているが、テレビ偉大さをあらためて知らされた思いだ。
スウェーデンでは、1980年代後半スキーのケガが多く発生していたため、テレビのコマーシャルを通じて大々的に事故防止に関する情報を流したところ、翌シーズンは数10%もケガが減ったという報告がある。スキーヤーに事故防止の情報がいかに重要かを知らされるとともに、教育することで事故は防止できるということを実証した例だ。
またハイバックによるこのような事故を減らすために、スキー場側もリフト乗り場横に看板を立てて、事故防止を呼びかけるところもある。
このような具体的な事故防止を呼びかける対策は直接ケガを減らすことに役立つものだ。
アメリカのあるスキー場ではリフトの支柱ごとにケガ防止の注意事項やルールが掲げられていた。リフトに乗ってから降りるまでの間に一通りのことが教育されるようになっている訳だ。ゲレンデのレストランの紙コップ、砂糖の袋やナプキンにも注意事項が印刷されていた。ケガをした者に注意事項を見なかったとは言わせないほどの事故防止情報の提供ぶりだった。
スノーボードは新しいスポーツであるがゆえ、傷害の種類もスキーにはない新しいものが出現している。用具も年々新しいアイデアの物が販売されるなど発展途上のものだ。それだけに事故防止に関する情報は重要となる。教育されたスノーボーダーをいかに増やしていくかが事故防止を進めていくカギである。
〔福井新聞社提供〕 |