文部大臣の「スポーツ振興基本計画」 をどう活かすのか
〜21世紀の豊かな スポーツ環境を目指して(2)〜
笠原 一也
東京女子体育大学教授
1. スポーツ振興基本計画が策定されるまでの経緯
1)保健体育審議会への文部大臣の諮問理由
平成11年9月22日、文部大臣の諮問機関である保健体育審議会に対し、文部大臣から「スポーツ振興基本計画の在り方について」が諮問された。
その内容については、
(1)生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策
(2)わが国の国際競技力の総合的な向上策
(3)上記の視点に関連し、生涯スポーツ・競技スポーツと学校体育との連携を推進するための方策
などについてであり、それぞれ平成13年から概ね10年間で実現すべきことなど、スポーツ振興基本計画に盛り込む基本的な内容を総合的に検討することを求めたものである。
2)スポーツ振興基本計画の策定の背景
スポーツ振興法では、第4条に、文部大臣はスポーツの振興に関する基本的計画を定めるものとされているが、その「スポーツ振興基本計画」については今まで策定されていなかったことから、それに変わるものとして、今日まで、保健体育審議会の答申をもって実質的にその機能を果たしてきたとされている。
しかしながら、青少年の体力・運動能力の低下傾向、身近なスポーツ環境の整備充実の必要性、国際競技力の長期的・相対的低下などの諸課題に適切に対応し、また、スポーツに対する国民の関心や期待のさらなる高まり、少子高齢化等の社会状況の変化、スポーツ振興投票法の実施等に関する法律の成立という新たな状況を踏まえ、スポーツ振興施策をより体系的・計画的に推進し、来るべき21世紀におけるわが国のスポーツの一層の振興を図ることが求められていることから、生涯スポーツ・競技スポーツの両面にわたり、また、学校体育との連携に考慮しつつ、スポーツ振興法第4条に基づく「スポーツ振興基本計画」を早急に策定し、効果的な施策の推進を図りたいとしたことによるものである。
3) 昭和36年制定時のスポーツ振興法の求めた「スポーツ振興基本計画」とは
スポーツ振興法では、スポーツ振興基本計画について、下記のように定めている。
第4条文部大臣は、スポーツの振興に関する基本的計画を定めるものとする。
2 文部大臣は、前項の基本的計画を定めるについては、あらかじめ、保健体育審議会の意見を聞かなければならない。
3 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、第1項の基本的計画を参しゃくして、その地方の実情に即したスポーツ振興に関する計画を定めるものとする。
4 都道府県及びスポーツ振興審議会が置かれている市町村の教育委員会は、前項の計画を定めるについては、あらかじめ、スポーツ振興審議会の意見を聞かなければならない。
スポーツ振興法の逐条解説によれば、この第4条は、国および地方公共団体がスポーツ振興のための施策を推進していく場合の基盤となる基本的計画を策定することに関し規定したものとしている。
スポーツ振興行政のように、ともすれば行政施策の一貫性、継続性が維持されがたく、関係者の思いつきと独断に左右され、重点的到着目標があいまいとなり、有効な効果を望みがたい結果となりがちであるので、施策の現実的発動を規制する基本計画が必要なことから、スポーツ振興法運用の基礎となる基本計画を国及び地方公共団体において策定してかかる必要から設けたものである。
そして、文部大臣の定める基本的計画は、国の立場で策定するいわば中央計画であり、これを参しゃくしてそれぞれ地方の実情に即して都道府県や市町村の教育委員会で定める計画は地方計画といえると述べている。
この場合において、両者の関係は、後者が前者を参しゃくして定めるとされる以外に法的関係は無く、真にそれぞれの事情に即した具体的なものであって、実行性のあるものが定められて大いに活用されることが期待されるわけであるとし、なお、都道府県のものと市町村のものとの相互の関係についてもなんら規定はないが、事実上は、国と地方の関係に準じて市町村はこれを包括する広域団体としての都道府県の計画を参しゃくして定めることが望ましいといえるとも述べている。
このようにスポーツ振興法の逐条解説をみるかぎり、「スポーツ振興基本計画」は、「スポーツ振興法」に基づき、長期的総合的視点から国が目指すスポーツ振興の基本方向を示すものといえるのであり、国の中央計画のもと、各都道府県及び市町村は、それぞれの地域の実情のもとに具体的な計画をたてることとなろう。
しかしながら、40年振りの「スポーツ振興基本計画」の策定ということもあって、多くの都道府県、市町村では、すでにそれぞれのスポーツ振興計画を策定していることから、その対応については、今後に待つことになるが、文部省では、都道府県及び市町村はもとより、(財)日本体育協会や(財)日本オリンピック委員会をはじめ関係スポーツ団体に対し、この「スポーツ振興基本計画」を踏まえて、それぞれの役割に応じ、その事業活動の展開に積極的に取り組むことと、本計画の趣旨についても周知するよう通知したところである。
そして、文部省では、わが国のスポーツ振興は、一人一人のスポーツへの主体的な取組があって初めて可能となるものとしており、今後、この「スポーツ振興基本計画」を指針として、国、地方公共団体、民間団体、競技者が一体となってスポーツ振興に取組むことにより、明るく豊かで活力ある社会が実現されるとしている。
保健体育審議会の答申「スポーツ振興基本計画の在り方について」が中間報告された時、マスコミは、日本勢メダル獲得低迷 英才教育で目指せ倍増(朝日新聞)、五輪メダル倍増10年計画(日本経済新聞)、中学、高校より校外クラブ重視(毎日新聞)、などの見出しで取上げている。
保健体育審議会の答申とスポーツ振興基本計画とは内容的にあまり変わっていないので、マスコミが取上げていることが具体的にどのような事なのかを含め、「スポーツ振興基本計画」の内容については、次回に紹介することにしたい。
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