「夢の球場を作るとしたら」
スポーツライター 浜田 昭八
以前巨人・松井秀喜選手が、球場について発言した。人工芝の球場が多くなり、選手の故障が増えている。東京ドームのグラウンドに手を加えて、故障防止をはかってほしい。できたら、天然芝を敷いた新球場をどこかに建ててもらいたい、といった趣旨だった。
松井に限らず、これは全選手の願いといっていいほどだ。グラウンドをコンクリートで固め、その上にカーペットのような人工芝を敷き詰める。ドーム球場には天然芝が使えないから、必然的に人工芝になる。屋根のない球場でも、天然芝の管理に人手と経費がかかるから、人工芝へと移行する。すると、固いグラウンドでプレーする選手の足首、ひざなどに、大きな負担がかかる。足をかばうと腰、肩に影響が及んで…、となるのだ。
セ、パ12球団が現在、本拠地にしている11球場(東京ドームは巨人、日本ハムが併用)のうち、天然芝は甲子園、広島、神戸の3球場だけになった。ここを本拠地にするチームの選手も、ビジターになると人工芝の上でプレーする。足腰を痛める確率がやや低くなるぐらいで、危険にさらされていることには変わりはない。
米大リーグでも、同じような声が選手の間から起こった。球場の管理、維持を優先するあまりに、選手寿命を犠牲にしているという不満だった。その声に押されるようにして、人工芝をはがし、天然芝に戻す球場が増えてきた。新設される球場は天然芝使用が主流となっている。イチローがプレーしているシアトル・マリナーズの本拠地は一昨年、人工芝のドーム球場「キングドーム」から天然芝で屋根は開閉式の「セーフコフィールド」へ移った。
観客の側から見ても、人工芝やドーム球場は味気ない。人工芝では、イレギュラーバウンドに対応するプロの妙技が見られないし、ドーム球場では青空や夜空へ舞い上がる白球の美しさが半減する。西武球場に屋根がついたときには、狭山丘陵の緑が遮られ、沈む夕日の美しさも見られなくなったと、残念がるファンが少なくなかった。
ただ、人工芝と屋根は、興行の大敵である「雨天中止」を大幅に減らした。屋根付き球場は、年間を通してスケジュール通りに消化できる。コンサートや集会との日程調整も容易になり、経済性は高まった。屋根のない球場でも、神宮球場のように透水性の人工芝を使うと、雨への対応がしやすい。遠いところから足を運んだファンに、雨で中止の無念を味わせないためには、美観やゲーム性、選手の肉体的負担は、ある程度は犠牲にしなければならないだろう。
理想からいえば、選手もファンも喜び、弁当屋さんも雨天中止のリスクを背負わない球場があればいいのだろう。そんな夢の球場が日本にできるだろうか。神戸グリーンスタジアムを主体にして、横浜スタジアム、福岡ドームが持つ機能を一部取り入れた球場をイメージしてみよう。
神戸は大リーグ式に、内野のダイヤモンドにも芝生を張った天然芝の球場である。外野席の後方には木がしげり、雰囲気のよさは抜群である。これに、福岡ドームのような開閉式の屋根をつけて、季節と天候によって開け閉めすればいい。福岡は海風が強く、屋根はほとんど閉じたままで、宝の持ち腐れのような状態になっている。
ほかのイベントのためには、横浜スタジアムの可動式スタンドを取り入れたらいい。
これも動かすと経費がかかるため、現在は威力を発揮していない。
できたらこれに、大駐車場を併設したい。電車やバスでくるファンのためには、駅やバス停からスタンドまで、雨風にさらされず、スムーズに人が流れる通路を作ってあげたいものだ。こんな球場を、首都圏や京阪神地区に作るとしたら、一体どれだけの費用がかかるだろうか。夢のまた夢。景気回復を待つとしよう。
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