新監督の手腕は?

第00008号
2002年9月6日 更新

前回掲載したベテラン選手のコラム。その後続々とベテラン選手が引退宣言を行い少々悲しい気がしたが、また、前回に引き続き、スポーツライター浜田氏かシーズン前の2月に執筆してくださったコラムを紹介したい。通常このようなコラムはシーズン前に予想的内容で読まれたまま、シーズン終了直前には内容さえ忘れられてしまう。ここで、シーズン前のコラムを読み返すことにより、このシーズンを振り返りながら新監督の采配がどうだったのかを改めて振り返ることができるのではないかと思い、今回の掲載にいたった。

SNJ編集部

「新監督の手腕は?」

スポーツライター 浜田 昭八

プロ野球の監督にとって、今はまだ楽しい時期だろう。キャンプで鍛えた戦力が、どんな形で花開くかと胸躍らせている。しかし、オープン戦が進むにつれて、投手陣の数が足りない、ここにもスキがあると、次第に不安が膨らむ。経験豊富な監督ならカバーする方法を知っているが、新人監督はとまどう。今年は5球団で監督が交代した。このうち阪神・星野監督を除く4監督は、監督一年生。果たしてどんな采配を振るうのだろうか。

巨人・原監督は12球団監督の中で最年少の43歳。長嶋前監督があまりにも大きい存在だっただけに、やりづらいことが多いだろう。前監督に比べると現役時代から、どこか頼りなげな感じがした。スーパースター長嶋には遠慮がちだったマスコミも、原監督の采配は容赦なく批判すると思われる。それに、どこまで耐えられるかが最大の課題だ。
戦力的には恵まれているが、斎藤雅、槙原が引退した投手陣に不安が残る。野手だったので、投手の扱いについては未知数。投手コーチ鹿取への権限委譲が大きなカギとなる。現役時代にはケガで苦しみ、コンバート、ベンチウォーマーも体験した。これは監督をする上で、大きな武器となるはずだ。

中日・山田監督はあの水原茂さんですら味わった“外様監督”の悲哀を感じるかも知れない。排他的だった中京地区の気風は、様変りしてきた。それでも、親会社の中日新聞を中心にしたドラゴンズ一家の結束は非常に固い。チームが低迷すると、OBからの風当たりが“よそ者”山田に集中する。
星野前監督時代から、投手陣の管理、運営は任されていた。その点では他の一年生監督のような不安はない。気掛かりなのは元エースの監督にありがちだが、二流打者の気持ちがわからないことではないか。打撃の難しさを理解せず、強引に仕掛ける傾向があると言われる。この辺りを若いヘッドコーチ仁村徹が、どのようにセーブするだろうか。

オリックス・石毛監督はダイエー時代に、二軍監督を経験している。このとき、若い選手を友達感覚で扱ったのが、「ジャンケンで打順を決めた」などと誤り伝えられた。現役引退後、ドジャースへコーチ留学して、選手本人が楽しいと感じなければ伸びないと感じるようになった。ただ、一軍で勝負するとき、この考えが邪魔になりはしないか。
中心打者アリアス、田口、投手陣で勝ち頭の加藤が去った陣容は心細い。仰木前監督は日替わり打線、細切れ投手起用で薄い選手層をカバーした。それでは力が出ないと、不満を漏らす選手がいた。それだけに、不動のオーダーを作り、投手の役割分担を固めるという、一年生監督には難しい仕事が残った。

西武・伊原監督は苦労人だ。原、山田、石毛が元MVPであるのに対し、西鉄、巨人、西武などの控えの内野手だった伊原に、目ぼしい実績はない。それでも芝工大時代には監督代行を経験し、西鉄では幹部候補だった。球団身売りという不運にさらされたが、西武で広岡、森両監督、阪神で野村監督のもとでコーチをして、みっちりと野球を学んだ。
八〇年代の最強チーム西武も、ここ三年間は2、2、3位。戦力バランスはダイエー、近鉄などに劣らないが、広岡、森時代に比べて試合運びに緻密さを欠いていた。この辺りをどう修正するか。さらに、負け数が多くなった松坂を、信頼できるエースに仕立て直すのに、どんな手を打つかも注目される。

「どれだけ選手を集めるか。監督としての勝負は、そこでほぼ決まる」と、名将三原脩は言った。監督がスカウト活動もしていた時代の話だが、それは球団フロントが選手を集める今でも同じ。補強にかける金額が、監督の評価を左右する傾向がある。その観点で言うなら、人気球団のプレッシャーが大きくのしかかるが、原が名将への最短距離に立っているといえよう。苦しいのは石毛。乏しい戦力を、どう組み合わせて戦うのだろうか。

セキュリティースポーツライフ
2002年2月号より



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