「肉体年齢・気力年齢」

第00007号
2002年8月30日 更新

「肉体年齢・気力年齢」

昨年末、まだプロ野球が今シーズンに向けチーム状況を整理していた頃、スポーツライターである浜田氏によるコラムを拝見した。今シーズンも終盤にさしかかっている上に、先日ベテランの一人ダイエーの秋山が引退表明をした。そんな時、このコラムを読み直して野球シーズン終盤の盛り上がりを楽しむのも一興ではないだろうか。ベテラン選手の頑張りがチームにどう影響を与えているのだろうか・・・
そして夏も山場を過ぎ秋となる今、疲れがどっと出てくる頃でもないだろうか。そんな時、気力を振り絞り頑張る野球選手達をみて元気をもらいたいものだ。

SNJ編集部

「肉体年齢・気力年齢」
スポーツライター浜田 昭八

チーム若返り。耳に心地よい響きがして、未来に大きな期待を抱かせる。シーズンオフに入ってからのプロ野球各球団は、若返り工作を着々と進めてきた。その蔭で、数々の名勝負を演じてきたベテランが、ヤングパワーに押し出されて現役を引退した。
巨人では38歳(2001年12月末現在、以下同じ)の槙原、斎藤雅(36)、村田真(38)が後進に道を譲った。槙原は右肩、斎藤雅は左太ももを痛めて無念のリタイア。村田真は新人捕手阿部を実戦で鍛えるために出番が減った。巧みなリードはまだ捨て難いが、若手育成の方針に従わざるをえない。
阪神・和田(39)はコーチ兼任で頑張ってきだが、来季からはコーチに専念する。これで、1985年の阪神優勝の喜びを知る現役選手が消えた。パ・リーグでは日本ハム、西武で通算15年投げた西崎(37)が、右足内転筋を痛めて、現役続行を断念した。

鍛え抜いたプロ野球選手も30歳を過ぎると体力的に衰え始める。ここで節制してトレーニングを積まないと、衰えは加速する。どんなに努力しても、35歳ごろからは引退が現実的問題になってくる。投手は球の切れ味が鈍り、カモだった打者に、いい当たりをされるようになる。打者なら本塁打性の当たりがフェンス際で失速する。守備の出足も、少しづつ悪くなる。
37、8歳で引退するなら、まだあきらめもつく。悔しいのは、ケガやチームの事情のために、30歳そこそこであきらめるケースだ。中日・今中は30歳、ダイエー・西村は33歳で引退した。今中は93年のセ最多勝投手だが、96年に左肩を痛めた。西村はヤクルト、近鉄を経てダイエーへテスト入団。カムバック賞を獲得したが、右ひじ故障に勝てなかった。
今中、西村ともに投げる意欲は十分だったが、球団には故障回復をゆっくり待つほどの余裕がなかった。36歳になっているが、近鉄・香田も後ろ髪を引かれる思いの引退だ。右肩を痛めたが、まだやる気は十分だった。投手陣が弱い近鉄だが、香田の回復を待つよりも、巨人、近鉄で18年投げ続けた経験をコーチで生かすことを望んだ。

一方、引退の危機に直面しながら、頑強にそれを拒んでいる選手もいる。来シーズン開幕時に40歳になるダイエー・秋山がその筆頭だ。西武時代から通算して21年もプレーしてきた。打守走の三拍子そろった外野手で、全盛時に大リーグへ挑戦して欲しかった。近年は腰痛に悩み、攻守ともにパワーは落ち気味だが、このまま引き下がる気は毛頭ない。
西武、ダイエー、巨人で20年投げてきた工藤(38)は、“筋肉おたく”と言われるほどトレーニングに関する知識が豊富だ。その知識と熱心な鍛錬が、小柄な工藤をここまで支えてきた。今年は左肩痛で不振だったが、必ずよみがえってくるだろう。肉体の若さを鍛錬で保っているし、「気力年齢」もまだまだ若いからだ。
同じように、肉体の衰えを「気力」でカバーして来季に臨む選手に、いずれも39歳の西武・伊東、オリックス・藤井、阪神・広沢らがいる。伊東はコーチ専任を打診されたが、選手兼任で頑張る。藤井、広沢は体力的にフル出場できないだろうが、本人たちは年寄り扱いに精一杯抵抗している。引退前のベテランは、指導者への道を考えて“いい子”になりがち。だが、この超ベテランはまだまだ頼もしい
“駄々っ子”でいるだろう。
もう一人、周囲の引退勧告にも耳を貸さずに現役を続けるのが、近鉄、巨人、ロッテを渡り歩き、来季は横浜でプレーする石井浩郎(37)だ。ロッテでは福浦の台頭ではみ出した上に、脇腹肉離れにも悩んだ。それでも、ここしばらくは不完全燃焼だったので、もうひと花咲かせようと最後の気力を振り絞る。気力年齢は30歳そこそこと見た。伸び盛りの選手を見るのは楽しいが、こんなベテランの挑戦も見応えがある。

セキュリティースポーツライフ
2001年12月号より



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