私学経営とスポーツ

第00005号
2002年8月19日 更新

私学経営とスポーツ

学校法人 佐藤栄学園

理事長 佐藤 栄太郎

受験戦争とはいうけれど勉学に打ち込むのも、スポーツ競技に参加できるのも、人生80年のうちの青春時代の一瞬にすぎない。その折の情熱、気概といったものがバネとなり、その後の人生を開拓、構築し人格を形成した例は、いくらでも拾うことができる。このことから、私は子供たちに1日24時間を大切にし、有効に生かすよう「今日(こんにち)学べ」と論し、夢と理想を抱く者は「誰でも努力と勉強次第でその道の第一人者になれる」と説いている。

私学と国、公立との異なる点は教育費負担の格差など、各論ではいろいろと指摘し挙げることができるが、決定的な違いは私学それぞれに建学の精神があり、その精神に立脚し夢と理想を追究していることである。しかし現実には、その精神が世に浸透し理解されるまでに長い時間を必要とし、したがって経営のベースとなる数の子供がなかなか集まらないという私学があるのも事実である。まして少子化時代を迎え、多くの私学は、今後の経営に危機感を抱いている。それや、これやの事情からPRの選択肢として「東大か、甲子園か」が生まれている。中でも、スポーツが人々に与える感動は計り知れないものがあり、効果は大きい。このため強いチーム、強い選手を養成し学校の存在感を示す風潮があることは否定できない。

戦前から戦後間もないころまで、各種競技で群を抜いた私学は建学の精神と、そこからかもし出される校風から一流の選手、チームを輩出し結果として学校の名を高め、そのことからまた、素質のある若者が集まるという血液の循環にも似た副次的効果を生んだ。私学経営の理想とする姿である。もちろん、選手個々の血のにじむような練習があった。亡くなられた三段跳びの織田幹雄氏は早大時代、外国から陸上関係の本を取り寄せたり、ジャンプ力アップの研究のため激しい動きをする歌舞伎を観劇したりして独自の走法を生み出したという。日大の水泳選手だったJOCの古橋広之進会長も
駐留米軍を通じて泳法の本を入手して勉強をし、練習は朝の4時半ごろから取り組んだ、と書いている。「努力と勉強」の裏打ちの一、二例である。

私の学園は、人を生きた資本資産ととらえ、建学の精神を「人間是宝(にんげん・これたから)」とし埼玉県内に大学、短大、高校、中学、専門学校の9校を擁している。
このうちの埼玉栄高校に例をとれば、1972年の開校以来、部活動が盛んで、とりわけスポーツでは1997年までの全国高校駅伝での女子3連覇、1998年の甲子園初出場では初戦で優勝候補と目された相手校を破るなど、数々の栄光の実績から全国区の高校として注目されている。それはそれで大きな喜びでもあるが、汗にまみれて練習に励む子供たちの姿を見る時の感動も、それに劣らず大きいものである。つい、自然と「やるからには日本一を目指せ」との激励となってしまう。人に負けない、他校の倍以上の努力の過程から、何かをつかませて学園から送り出すことが子供を託されている者の重責、というのが私の持論の一つでもある。
その意味でも、スポーツを奨励している。部活動を通して仲間との連帯感、先輩と後輩との礼と尊敬の気持ちなどがはぐくまれる。昨今、希薄といわれるタテ、ヨコの規範意識の教育の場でもある。こうした私の信念と、それを理解し実践する指導教師の姿が保護者にも理解、共鳴され部活動をしている生徒は全体の7割、そのうち全国大会を経験した生徒は、今春の卒業生を含めて10人中、7人を数える。つけ加えれば、これらの活躍、成果に比例して、世間でいう有名大学の進学率が上昇している。因果関係は分からないし、国公立にその逆の現象があるという話は、いまだ耳にしたことがない。



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