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第1回:子供たちはどうして指導者の言うことを聞くのか?
山梨大学 教育人間科学部 教授 遠 藤 俊 郎
筆者は専門がバレーボールなのでバレーボールスポーツ少年団の大会や練習場面を覗くことが多い。体育館では指導者の皆さんが熱心に指導し、子供たちもそれに応える様に必死でボールを追っている姿には思わず「頑張れ!」と声援したくなってしまう。指導者の指示にも「ハイ!」と大きな返事と共に素直にそれを実行しようとプレーしている。それにしても、どうして子供たちは指導者の言うことをこんなにも聞こうとするのであろうか?指導者はどうして子供たちにこんなにも影響力を持っているのであろうか?
このように子供たちが指導者からの指示にしたがったり、時には拒否したりという一連の過程は、社会的な影響過程の一つとして捉えることができ、指導者が子供たちに影響を及ぼすことができるのは、指導者に何らかの「社会的勢力(social
power)」が備わっているからだと考えられている。そして、このような対人間の一般的な勢力は、その基盤(base)あるいは属性の違いによって幾つかの種類に分類されている。例えば、French
& Raven(1959)は、影響の送り手(O)に対する受け手(P)の認知に基づき、勢力の資源として以下の5つを挙げている。
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「報酬勢力」:Oは報酬をもたらすことができるとPが認知することに基づく。
- 「強制勢力」:Oは罰を加えることができるとPが認知することに基づく。
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「正当勢力」:Oが行動を規制することは正当なことであるというPの認識に基づく。
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「参照勢力」:PのOとの同一視に基づく。
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「専門勢力」:Oが高度な知識を持っているとPが認知することに基づく。
ところで、上記の勢力の分類はあくまでも一般的な対人関係に関して言及されたものであるが、スポーツの指導者と選手としての子供たちの関係にも同様なことが当てはまるのであろうか。
そこで筆者は山梨県下の小学校3年生以上のバレーボールスポーツ少年団員375名に調査を実施した所、以下の6勢力が抽出された。
- 「親近・受容勢力」:指導者に対する心理的距離が近いという認識と指導者から受容されているという認識に基づく。
- 「専門・参照勢力」:指導者がバレーボールの専門的な知識や技能を持っているという認識と指導者をお手本としたい、参照したいという認識に基づく。
- 「罰勢力」:指示に従わない場合に指導者から罰を受けることの予想や指導者への畏怖の念に関係。
- 「外見・同一化勢力」:指導者の外見上の容姿に関する認識と同一視の認識に基づく。
- 「正当性勢力」:指導者の影響を当然のこととして受け入れようと言う認識に基づく。
- 「利益勢力」:指導者の指示に従うことが自分の利益になるといった期待に関連した認識に基づく。
このように、スポーツ少年団等の児童期におけるスポーツ活動においては若干一般的な対人関係とは異なる特殊な勢力の資源が考えられるのであり、普段子供たちが指導者のどの様な側面を意識してスポーツ活動に参与しているかをうかがい知る上では重要な情報となろう。
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